李強氏が首相に就任、民間企業支援を強調

(中国)

北京発

2023年03月14日

中国の第14期全国人民代表大会(全人代)第1回会議(2023年3月7日記事参照)で3月11日、李強氏が首相に任命された。

李強氏は浙江省、江蘇省でキャリアを積み、2017~2022年に上海市書記を務めた。2022年10月の中国共産党第20期中央委員会第1回全体会議(1中全会)で、最高指導部である中央政治局常務委員に序列2位として選出されている(2022年10月25日記事参照)。

李氏は3月13日に行われた就任後初の記者会見で、2023年の重点方針として(1)人民を中心とする発展思想をしっかりと打ち立てる、(2)質の高い発展の推進に力を集中する、(3)改革開放を揺るぐことなく深化させる、の3点を挙げた。中でも(1)では、「多くの一般市民は経済成長率よりも、住宅、就業、収入、教育、医療、環境など身の回りの具体的なことを気にかけている」として、人々の実感に寄り添った政策を実施していくとした。

政府活動報告(2023年3月7日記事参照)で示された、5%前後という実質GDP成長率目標については、さまざまな面から総合的に考慮されたものとした。同時に、既に中国経済は規模が巨大であることや、多くの課題に直面していることから、目標達成は容易ではなく、いっそうの努力が必要との認識を示した。

民間経済の発展については、「2つの揺るぐことなく」(注)という方針は変わることはないとした。その上で、市場化・法治化・国際化されたビジネス環境を整備し、各種企業の公平な競争を促し、民間企業の発展を支援するとした。また、中国には超大規模な市場があり、多くの分野で民間企業にとって発展のチャンスがあるとした。

2022年に中国の人口が減少したことについては、「人口ボーナス」は簡単に消失するものではなく、現在の中国では人材の質の向上による「人材ボーナス」も期待できるとした。退職年齢の延長については、適切な時期に妥当な内容で実施するとした。

米中関係については、「デカップリング」の論調が盛り上がる中でも中・米の貿易額は過去最高を記録するなど経済的な結びつきは強く、両国の協力の余地は大きいとした。

また、政府機関の業務執行にあたっての重点についても語った。幹部職員が現場を知る必要性を強調したほか、政府業務は法律の枠組みで行われるべきで、すべての行政行為は法的根拠が必要とした。

(注)公有制経済を揺るぐことなく強固にし、発展させ、非公有制経済の発展を揺るぐことなく奨励し、支援し、誘導することを指す。

(河野円洋)

(中国)

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