バイデン米政権、5月11日に新型コロナ緊急事態の解除へ

(米国)

ニューヨーク発

2023年02月01日

米国のジョー・バイデン政権は1月30日、2020年から継続している新型コロナウイルスに関する国家緊急事態と公衆衛生緊急事態を、5月11日をもって解除すると発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

現在、国家緊急事態(2020年3月17日記事参照)は3月1日、公衆衛生緊急事態は4月11日が終了日となっているが、公衆衛生緊急事態終了の際は60日前に公示するというこれまでの政府の公約に沿い、5月11日まで延長するとした。なお、5月11日までの延長は個人やビジネス、学校を制約するものではないとし、マスク着用、ワクチン接種、治療薬と感染検査の使用を義務付けるものでもないとした。

連邦議会では現在、共和党が多数派となった下院で、国家緊急事態を即時に解除する上下両院の共同決議案(H.J.Res.7外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)と、公衆衛生緊急事態を即時に解除する法案(H.R.382外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が提出されている。しかし、政権はこれらが採択・成立され、国家緊急事態と公衆衛生緊急事態が突然解除された場合、以下の2点の混乱がもたらされるとし、両法案・決議案に断固として反対するとしている。

1点目の混乱は、緊急事態下に特別な規則によって運営され、各州に特別資金を提供することによって医療費がカバーされていた低所得者用メディケイド制度に関して。米国議会は12月、緊急事態の終了とともに患者が医療へのアクセスを予期せず失ったり、各州が急な予算の削減に直面したりすることのないよう、これらの規則を段階的に廃止する措置を導入した。そのような状況下で緊急事態の突然の終了は混乱を招くことが想定されるとしている。

2点目の混乱は、緊急事態の終了と同時に解除されることになるタイトル42(注)について。タイトル42は、米国へ陸路またはフェリーで入国する外国籍者に対する入国規制で、バイデン政権は2022年5月23日をもって解除する予定だったものの(2022年4月6日記事参照)、最高裁判所とルイジアナ州連邦地方裁判所の命令により現在も維持されている。1月に不法移民の減少措置(2023年1月6日記事参照)を取り始めてから、ベネズエラ、キューバ、ニカラグア、ハイチからの移民は半減したが、緊急事態の終了とともにタイトル42が解除されれば、南西部の国境から相当数の移民が流入することが見込まれるとしている。そのため、もしH.R.382によってタイトル42が終了すれば、議会は事実上、1日当たり数千人の移民を受け入れることを政権に要求することとなるとしている。

(注)合衆国法典(USC)第42章に規定されており、行政府に対して、外国からの入国者を経由した感染症防止のために、移民の入国を制限する権限を与えている。トランプ政権時の2020年3月に新型コロナウイルス感染拡大を理由に発動され、亡命申請者を米国内に滞在させず即時に本国へ強制送還する根拠となっている。

(吉田奈津絵)

(米国)

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