バイデン米政権、不法入国者減少のための措置を公表

(米国、メキシコ、キューバ、ニカラグア、ハイチ)

ニューヨーク発

2023年01月06日

米国のジョー・バイデン大統領は1月5日、メキシコと接する国境からの移民の不法な入国が増加していることを受けて、その減少に向けた措置を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。また、国境警備を管轄する国土安全保障省(DHS)は同日、措置の詳細を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

税関・国境警備局(CBP)の統計によると、不法な入国に対する取り締まり件数は新型コロナウイルスの感染拡大で減少した2020年度(2019年10月~2020年9月)を除いて年々、増加傾向にある。特にバイデン政権が発足して以降、件数は急増しており、2021年度が約196万件、2022年度は約277万件で、そのほとんどがメキシコと接する国境からとなっている。これに対して、共和党は、バイデン政権が移民に開放的な姿勢を示しているためにこの様な事態を招いたと厳しく批判している。

移民は2022年11月に実施された中間選挙で、有権者が重視する政治課題の1つに挙げられており(2022年8月4日記事参照)、政権としても何らかの成果が必要となっている。2022年11月にCBP長官を務めていたクリス・マグナス氏が辞任に追い込まれたのは、不法な入国件数の急増に対処できていないことを理由とした事実上の更迭とされている(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版2022年11月12日)。

バイデン大統領は記者会見で、政権としては発足当初に包括的な移民制度改革法案を公表しており(2021年1月21日記事参照)、それが成立していないのは共和党が拒否したからだと指摘した。法案が成立するまでは、政権として手元にある手段を講じていくとし、トランプ前政権時に発動された「タイトル42」(注1)も利用しつつ、秩序立った安全かつ人道的な対応を行っていくとした。DHSのプレスリリースによると、「タイトル42」はいずれ終了させるとしつつ、主に次の4つの措置を講じていくとしている。

  1. キューバ、ハイチ、ニカラグアからの入国者に対して、新たな臨時入国許可制度を設ける。これは、ベネズエラ、ウクライナからの入国者向けに設けて成功した制度をモデルとする。
  2. CBPが公開する入国手続き用アプリ「CBO One」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを通じて、非米国市民が米国への入国通関所での面談予約を取得できるメカニズムを提供する。
  3. 「タイトル42」が適用できない入国者に対して、「タイトル8」(注2)の執行を強化する。これには亡命申請処理のためのリソース増強なども含む。
  4. 補完的措置として、DHSと司法省は近く、米国またはパートナー国で利用可能な新たな、および既存の合法的な手続きの利用を奨励し、亡命申請ができない者に一定の条件を設ける規則案を公表する。

バイデン大統領は2023年1月8日に、メキシコとの国境に接するテキサス州のエルパソを訪問し、国境警備の現状を視察するとともに、近隣の関係者と面会して必要な措置などについて意見を聴取するとしている。その上で、共和党に対して行動を働きかけていくとした。

(注1)合衆国法典(USC)第42章に規定されており、行政府に対して、外国からの入国者を経由した感染症防止のために移民の入国を制限する権限を与えている。トランプ政権時の2020年3月に新型コロナウイルスの感染拡大を理由に発動され、亡命申請者を米国内に滞在させず即時に本国へ強制送還する根拠となった。

(注2)USC第8章に規定されており、行政府に対して、許可なく米国に入国した者および米国滞在の法的根拠を確立できない者を国外退去させることに加え、将来的な移民手続きも禁じるなどの権限を与えている。

(磯部真一)

(米国、メキシコ、キューバ、ニカラグア、ハイチ)

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