政策金利1ポイント引き上げで賃料インフレ率は3.2ポイント低下、サンフランシスコ連銀試算

(米国)

ニューヨーク発

2023年02月17日

米国サンフランシスコ地区連邦準備銀行は2月13日、政策金利(フェデラル・ファンドレート)の1ポイント引き上げは、2年半かけて住居費のインフレ率を約3.2ポイントの引き下げる効果があるとの試算を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。連邦準備制度理事会(FRB)は2022年3月以降、計4.5ポイントの金利引き上げを実施しているが(2023年2月2日記事参照)、その間も消費者物価指数(CPI)における住居費は上昇し続けており(2023年2月15日記事参照)、金利引き上げの効果が住居費の上昇緩和や引き下げに表れるまで、タイムラグがあることを示したかたちだ。

試算には1988年から2019年までの時系列データと経済予測モデルを用いられ、金融政策に対する住居費や個人消費支出(PCE)のインフレ率といった経済指数の感応度が測定されている。発表によると、政策金利が1ポイント引き上げられた場合、その四半期において住居費のインフレ率は0.6ポイント低下する。その後、さらに低下幅は拡大していき、引き上げから10四半期(2年半)後には3.2ポイントまでインフレ抑制効果を生むと試算している。また、2年半にわたる住居費のインフレ率の低下は、PCE全体では約0.5ポイントの低下効果があるとしている。住居費のインフレ率の感応が遅れる要因として、長期賃貸契約の存在が住居費に硬直性をもたらしていることなどを指摘している。

急激な金融引き締めにより住宅需要は大きく鈍化しており、全米不動産協会が2023年1月20日に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした2022年通年の中古住宅販売件数は前年比17.8%減の503万戸で、価格についても、12月の販売価格の中央値は36万6,900ドルと、2022年夏ごろから徐々に低下してきている。

賃料にも、この傾向は徐々に表れている。住宅賃貸仲介会社のジローのデータによると、新規の賃料の伸びは鈍化しており、賃料の足元での伸び率は前年同月比で約8%と2022年3月のピーク時と比べておよそ半減している。CPIの住居費には賃料に加えて更新家賃なども含まれており、2023年1月時点では伸び鈍化の兆候はないが、今夏ごろには鈍化するのではないかともみられている(2023年1月4日記事参照)。住居費はCPIにおいて約3割のシェアを占め、その高低は物価全体の伸びに大きく影響を与えるため、CPIにおける住居費の伸びがいつ鈍化するか、引き続き注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

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