米国地区連銀が家賃に関する新指標発表、CPI住宅費の今後の伸びの鈍化を示唆
(米国)
ニューヨーク発
2023年01月04日
米国クリーブランド地区連邦準備銀行は12月19日、新規入居者の家賃のみを対象にした指標を開発したと発表した。米国の消費者物価指数(CPI)において、住居費は約3割のウェイトを占めるが(2022年11月11日記事参照)、その数値は新規入居者向け家賃と契約更新者向け家賃を一括したものとして集計されており、そのインフレ率が民間調査会社が発表する同様の指数と数値が異なる場合があることが課題だった。
同連銀が発表したレポートによれば、新指標は労働統計局(BLS)の家賃に関する原データを集計して作成されている。このうち、新規入居者向け家賃の伸びは2021年の夏ごろから急伸し、2022年第2四半期(4~6月)に、前年同期比で2005年以降ピークとなる11.9%上昇となったが、第3四半期(7~9月)は6.0%上昇と急減速した(添付資料図参照)。また、新規入居家賃の動きはCPI中の住居費の動きよりも約1年先行する傾向があると分析している。CPI中の住居費は2021年9月以降伸びが加速し続けているが、分析どおりであれば、2023年夏ごろにかけてこの伸びが鈍化するとみられる。
前述のとおり、住居費は家計の支払いの約3割を占め、家賃の高騰は家計の大きな負担となっている。米国で不動産管理に関する情報を発信するプロパティ・マネジメント・ドットコムが12月に実施した、米国のミレニアル世代(26~41歳)1,200人を対象とした調査によると、約4人に1人が両親と現在暮らしていると回答しており、このうち55%がこの1年間で実家に戻ったと回答している。その理由として「家賃を支払えないため」と回答した割合は4割弱(39%)を占め、「お金の節約」(51%)に次いで2番目に多かった。また、現在、賃貸住宅に住んでいる者の約15%は手取り収入の半分以上を家賃に支払っていると回答しており、中間選挙で多くが民主党を支持したとされる若年世代に、家賃高騰が影響を与えたことがうかがえる。
住宅費の上昇はインフレのみならず、ホームレス増加を通じて、治安問題にも影響を与える可能性がある。全米でも特に家賃が高いニューヨーク市では、低所得者向けの住宅建設計画や住宅建設基準の緩和などの住宅支援に力が入れられており(2022年6月22日記事、12月12日記事参照)、政策当局の関心も高い。今回の新指標が示唆するとおり、2023年半ばに住宅費が鈍化し、高インフレが収まりを見せるか、注目が集まる。
(宮野慶太)
(米国)
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