1月前半のインフレ率は再び上昇、食品価格が高止まり

(メキシコ)

メキシコ発

2023年01月30日

メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)の124日付プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、1月前半の全国消費者物価指数(INPC)上昇率は0.46%だった。過去12カ月の伸び率(年率)は7.94%と、12月末時点より0.08ポイント上昇した。INPCの年間上昇率は、20228月後半の8.77%をピークに、年末にかけて減少していたが、11月後半の7.46%を底に再び上昇に転じている(添付資料図1参照)。この背景には、コアインフレ率(注)の高止まりがある。

コアインフレ率は11月前半の8.66%をピークにその後緩やかに減少し、年末時点で8.34%まで下がったが、1月前半は再び8.45%と上向いている。特に、食品価格の上昇が14%を超える水準で高止まりしている影響が大きい。

政府は民間企業との合意の下で、基礎食料・物資の物価上昇を抑えるインフレ抑制策(20225101072023111日記事参照)を展開しているが、利益率を削る体力のない中小企業に対する価格抑制効果はなく、食品価格の上昇を抑えきれていない。食品価格の上昇は、エンゲル係数の高い低所得層により大きな影響を与えている。メキシコ競争力研究所(IMCO)の112日付レポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、世帯平均月間経常所得が3,313ペソ(約22,860円、1ペソ=約6.9円)の最も貧しい第1階層の購入品・サービスの価格上昇率が年間9.70%に達する一方、食品以外の消費の多い最も裕福な第10階層(世帯平均月間経常収入が54,427ペソ)にとっては、7.72%のインパクトにとどまっている。

ガソリンへの補助政策で、エネルギー価格低下が緩慢

一時は9%を超えてメキシコを上回っていた米国のインフレ率は、ここ6カ月連続で低下傾向にある。インフレ低下の要因として大きいのが原油価格低下を背景とした燃料などエネルギー価格の低下だ。他方、メキシコでは、原油価格が下がってもガソリンの小売価格の低下に大きな影響を及ぼさない(添付資料図2参照)。この背景には、メキシコ政府がガソリンやディーゼルの価格抑制を目的に導入している生産・サービス特別税(IEPS)の補助政策がある。

メキシコではガソリンやディーゼルの消費に際し、IEPS1リットル当たり56.5ペソ)が本来は課税されるが、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領によるガソリンやディーゼルの販売価格上昇をINPC全体の上昇率以下に抑えるという公約の下、同課税額の大半を免除している。IMCOによると、2022年の平均免除率はレギュラーガソリンが86.3%、プレミアム(ハイオク)ガソリンが77.8%、ディーゼルが97.0%となっている(「レフォルマ」紙124日付)。この補助制度の存在により、原油価格が上昇してガソリンの生産者価格(仕入れ価格)が上昇している局面では、小売価格の上昇が抑えられるものの、原油価格が低下してガソリンの仕入れ価格が低下している局面では、補助額が徐々に小さくなるだけで、小売価格の大幅な低下を短期的にはもたらさないことになる。

(注)天候などによって価格変動が大きい農産品やエネルギー価格、政府の方針で決定される公共料金を除いた価格の指数。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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