インフレ抑制を目的とした一般関税率の一時的免除措置を2023年末まで延長

(メキシコ)

メキシコ発

2023年01月11日

メキシコ政府は2023年1月6日、夕刻の連邦官報で「輸入関税の撤廃および基礎物資および家庭の基礎消費品目への行政上の便宜を付与する政令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を公布した。同政令は、食料品などの価格上昇抑制を目的としたインフレ率上昇抑制策の一環として、2022年5月16日付官報公布政令に基づく一般(MFN)関税の一時的免除措置(2022年5月19日記事参照)を延長するもの。また、2022年10月19日付官報公布政令に基づき、「基礎物資の輸入業者登録」に登録された輸入業者に対する非関税規制対象品目の輸入手続きを一時的に簡素化する措置(2022年10月24日記事参照)を延長する内容となっている。前者については2023年5月16日、後者については2023年2月28日までの有効期限だったが、双方とも2023年12月31日まで延長となる。

有効期限の延長に加え、関税免除対象品目の拡大も盛り込まれている(第1条)。関税が0%となる品目は、2022年5月16日付官報公布政令時点の71品目から105品目へと増える(39品目を追加し、5品目を削除)。基礎物資の輸入業者登録を済ませた輸入業者は、これら105品目に加え、政令第2条に記載された、従来からMFN関税率が0%だった30品目についても、非関税規制に関する証明書(輸入許可証など)を取得することなく、国税庁(SAT)に対する簡単な申告だけで輸入することが可能(政令第4条)。なお、基礎物資の輸入業者登録を行った輸入業者が、政令第1条および第2条に記載された品目について、外国のサプライヤーと2023年12月31日を超える期間に及ぶ長期購入契約締結した場合、輸入手続き簡素化措置の適用期限が2024年4月30日まで延長される可能性がある(政令付則第4条)。

醤油や即席スープも関税免除の対象に

政令第1条に基づく関税免除の恩典は、SATに対して基礎物資の輸入業者として登録された企業以外にも及ぶ。ただし、基礎物資の輸入業者として登録されていない場合は、非関税規制については従来どおりの手続きを踏む必要がある。

今回の政令で拡大された関税免除対象品目の中には、メキシコ進出日系企業が同国で輸入している品目も含まれる。たとえば、醤油(しょうゆ)(MFN関税率20%)や即席スープ(同10%)なども関税0%となる。ただし、進出日系企業の多くはこれらの品目を米国や日本から輸入しており、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)などを活用して関税を下げることも可能であるため、実質的な効果は大きくないとみられる。他方、TPP11を用いても関税が0%にならない牛肉の輸入(2022年5月19日記事参照)については、今回の政令でも対象として盛り込まれており、無関税の恩恵が2023年末まで及ぶこととなる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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