高インフレはヒスパニック系と低所得階層に最も影響、米NY連銀分析
(米国)
ニューヨーク発
2023年01月20日
米国ニューヨーク連邦準備銀行は1月18日、インフレの影響を人種別および所得階層別に分析した調査結果を発表した。
当該分析では、労働省による消費者支出調査によって得られた、30以上の商品・サービスが家計予算に占める割合に関する人種別(白人系、黒人系、ヒスパニック系、アジア・太平洋諸島系)および所得階層別(低所得世帯:年収が約5万ドル未満、中所得世帯:約5万ドルから15万ドル、高所得者層:約15万ドル以上)のデータと、これらの商品・サービスカテゴリーのインフレ率に関する消費者物価指数(CPI)データを組み合わせて、それぞれのインフレ率の指標を作成した。
分析によると、ヒスパニック系は、2020年時点で食品および輸送に関連した支出が家計予算に占めるシェアが人種間で最も高い。そのため、ガソリン代などの高騰などの影響により、2021年6月にヒスパニック系が経験したインフレ率は全国平均を1.5ポイント超上回ったとしている。足元ではこの差は縮小しているが、2022年12月時点でも全国平均を約0.27ポイント上回っており、他の人種グループが軒並み全国平均程度のインフレ率に収束する中でも唯一ギャップが残っている。
また、所得階層別でみると、食品と住居費の家計予算に占めるシェアは低所得者層が最も高く、輸送関連支出の占めるシェアは中所得者層が最も高かった。このため、2021年の春ごろから2022年初めにかけて、中所得者層のインフレ率は全国平均よりも0.2~0.3ポイント前後大きく、インフレによる影響が所得階層別で最も大きかった。しかし、ガソリン代などのエネルギー価格が落ち着いてきている足元では、中所得者層のインフレ率は全国平均と同水準となった。一方で、低所得者層の直近のインフレ率は全国平均よりも約0.3ポイント高く、2021年は全国平均を大きく下回っていたことも相まって、2022年12時点での対前年比インフレ率は所得階層別で最も大きいとされている。
一般に、民主党支持者にはヒスパニック系や低所得者層が多いといわれる。2022年12月の消費者物価上昇率は6.5%と、ピーク時の9.1%よりは減速しているが(2023年1月13日記事参照)、いまだ歴史的な高水準が続いている。バイデン政権の支持率は12月に上昇傾向を示したが(2022年12月23日記事参照)、1月17日以降は低下に転じており、今回の分析結果はインフレ抑制が支持率上昇に急務であることを示唆しているといえそうだ。
(宮野慶太)
(米国)
ビジネス短信 b3121802935fead3