FRB、大手銀行向けの気候変動リスクの試験的分析の概要公表

(米国)

ニューヨーク発

2023年01月19日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は117日、大手銀行向けに試験的に実施する気候変動に関連した金融リスクの分析プログラムの概要を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

対象となる銀行は、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレー、ウェルズ・ファーゴの6行。対象行は気候変動に関連する物理的リスクと移行リスクの両方について、ポートフォリオ内の特定資産に対する影響を分析し、FRBへの結果提出を求める。物理的リスクについては、気候変動の深刻度が異なる複数のシナリオの下で、住宅・商業用不動産ローンのポートフォリオが受け得る影響を検討する。移行リスクについては、各国・地域が現在の気候変動関連政策を変更しない場合のシナリオと、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにした場合のシナリオの下で、企業向け融資と商業用不動産ポートフォリオが受け得る影響を各行が検討する。

今回のプログラムは、気候変動リスクが銀行の財務に与え得る影響への理解を深めることが目的で、経済的ショックに対する銀行の財務健全性を調べることを目的にFRBが毎年実施している「ストレステスト(健全性審査)」(2022年6月27日記事参照)とは別のプログラムとなる。そのため、個別結果は開示しないとともに、分析結果が金融機関の自己資本などに影響を与えるものではないとしている。各行は7月末までにFRBに分析結果を提出し、取りまとめた結果は年内に公表予定としている。

銀行の気候変動リスクについては、202112月に米国通貨監督庁(OCC)が大手金融機関(総資産1,000億ドル超)向けに気候変動リスク管理の指針案を発表しているが(2021年12月20日記事参照)、その後も気候変動リスクはより顕在化しており、2022年の自然災害による被害額は1,650億ドルと、過去3番目の大きさとなるなど(2023年1月16日記事参照)、金融でもその対応が求められているのが現状だ。一方で、FRBによる急激な金融引き締めなどの影響で、対象行の1つゴールドマン・サックスの直近の決算は純利益が前期比69%減少となり、大幅な人員削減を発表するなど(ロイター117日)、大手行は足元でも厳しい対応を迫られている。そのため、今回のプログラムは現在の大手行にとってさらなる負担となる可能性もありそうだ。

(宮野慶太)

(米国)

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