米国、2022年の自然災害による被害額1,650億ドル、過去3番目の大きさ
(米国)
ニューヨーク発
2023年01月16日
米国海洋大気庁(NOAA)は1月10日、2022年の自然災害による被害額は1,650億ドルで、過去3番目の大きさとなったと発表した。1980年の統計開始以来、2017年の3,732億ドル、2005年の2,535億ドルに続く大きさだ。
発表によると、2022年に被害額10億ドル以上の自然災害は18回発生した。このうち6回が暴風雨、3回が熱帯低気圧、3回がひょう、2回が竜巻、1回が干ばつ、洪水、冬の嵐、山火事だった。特に9月にフロリダで発生したハリケーンイアンの被害額は、米国で発生したハリケーンとして1980年以降で3番目に大きい1,129億ドルに上った。西部と南部で長期間発生した干ばつと熱波による被害額も222億ドルに上り、記録上最も大きい干ばつの被害額となった。
自然災害は米国のみならず、世界的に頻発している。世界気象機関(WMO)によると、2022年の気温は産業革命前(1850年~1900年)の水準と比べて1.15度高く、記録上5番目ないし6番目に暑い年だった(注)。また、ドイツの大手保険会社ミュンヘン再保険の試算では、2022年の暴風雨、干ばつ、地震、火災などの自然災害による世界全体の被害額は約2,700億ドルに上ったとしている。このうち保険による負担額は約1,200億ドルと推計しており(ブルームバーグ1月9日)、過去に比して異常気象レベルともいえる最近の自然災害の頻発は保険会社の収益を圧迫している。
自然災害以外でも、新型コロナウイルス感染拡大により多くの死者が出た影響などから、2021年の米国での生命保険による保険金支払額が約1,000億ドルと、新型コロナのパンデミックが発生した2020年から10.8%増加し、単年の支払いとして過去最大になったと米生命保険協会は推計している。また、米国では交通事故死が急激に増加しており、2021年は前年比10.5%増の4万2,915人で、2005年以降で最多の死亡者数となった。2022年は9月までの交通事故死亡者数は前年同期間比0.2%減の3万1,785人だが、新型コロナ感染拡大前の2019年の同期間の死亡者数(2万7,019人)と比べると、17.6%増加しており、災害や事故が多発する現状は、保険会社にとって引き続き厳しい環境にあると言えそうだ。
(注)WMOは複数のデータセットを用いて年間平均気温の推移を算出しており、用いられるデータセットによってその順位が異なる。
(宮野慶太)
(米国)
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