ハイテク技術見本市「CES 2023」、EVコンセプトカーが続々と登場

(米国)

ニューヨーク発

2023年01月16日

ハイテク技術見本市「CES 2023」が158日、米国ラスベガスで開催された(2023年1月10日記事参照)。47に分類された製品・技術部門の中で、自動車技術部門は昨今の電気自動車(EV)シフトや安全機能に対する需要の高まりなどから高い注目を集め、同部門の企業が展示する9会場のうち、メイン会場だけでも220社以上が出展する盛況ぶりだった。

写真 自動車技術部門のメイン会場に入場する来場者(ジェトロ撮影)

自動車技術部門のメイン会場に入場する来場者(ジェトロ撮影)

自動車メーカーのステランティスは、カルロス・タバレス最高経営責任者(CEO)が基調講演を行い、ラムブランドのコンセプトカーでバッテリー式電気自動車(BEV)のピックアップトラック「レボリューション」を披露した。同車種では、フォードが既に「ライトニング」、GMが「シルバラード」、リビアンが「R1T」を市場投入しており、ステランティスは一歩遅れてスタートラインに立つことになる。

写真 ステランティスのBEV「レボリューション」(ジェトロ撮影)

ステランティスのBEV「レボリューション」(ジェトロ撮影)

ソニーのブースでは、ソニーグループの吉田憲一郎代表執行役会長兼社長CEO(最高経営責任者)が登壇して記者会見が行われ、ホンダとの共同開発によるBEVコンセプトカー「アフィーラ」を発表して注目を集めた。両社は202210月に合弁会社「ソニー・ホンダモビリティ」を設立。北米では2026年春に納車開始が予定されている。そのほか、メルセデス・ベンツはBEVコンセプトカーの「ビジョンEQXX」を披露。エネルギー密度を上げることでバッテリー重量の3割減を実現し、1回の充電で620マイル(約998キロ)の走行を可能にするという。

写真 ソニーとホンダが共同開発するEV「アフィーラ」(ジェトロ撮影)

ソニーとホンダが共同開発するEV「アフィーラ」(ジェトロ撮影)

既にEV生産を進めているゼネラルモーターズ(GM)は、同社が開発するEV用全固体電池とモーターのアーキテクチャーである「アルティナム」や、同社子会社オンスターによる緊急時の自動通報や盗難時のエンジン停止、最新のナビゲーションシステムなどといったコネクテッドによる車載テレマティクスサービスなど、自社の取り組みを紹介した。

オールカナダによるコンセプトカーに反響

CESは、ジェトロの「ジャパンパビリオン」をはじめ、国単位で最新技術などをアピールする場にもなっている。自動車技術部門では、フランス貿易投資庁が出展を支援した全200社以上から16社が展示。主に自動走行関連の技術などをアピールした。カナダからは、自動車部品工業会(APMA)が「プロジェクトアロー」と称し、教育機関と共同で設計、エンジニアリング、部品調達、車両生産に至るまで全てをカナダ国内で行ったBEVコンセプトカーを展示し反響を呼んでいた。米国での部材調達や車両生産の北米回帰が求められる中、APMAの試みはカナダでのEV生産の可能性を示したという点で意義があったと思われる。

写真 カナダ自動車部品工業会「プロジェクトアロー」のEVコンセプトカー(ジェトロ撮影)

カナダ自動車部品工業会「プロジェクトアロー」のEVコンセプトカー(ジェトロ撮影)

新興充電器メーカーに商機の兆し

EVシフトに伴い、充電器に関する新たな試みも目立った。米国テキサス州ヒューストンに本社を置くアイスペックスは、同社が開発・生産する移動式高速充電器を紹介。出力は60キロワットで、1台でテスラ3台分の充電が可能。充電時間は設置型の高速充電器と変わらないものの、価格は設置型よりも安価に設定されている。現在は中国のみの販売だが、間もなく米国での生産・販売を開始する予定で、既に米国内から50件以上の注文を受けているという。米国では、全米自動車協会(AAA)が12月にEV用移動充電器を装備したトラックによる充電サービスの開始を発表するなど(2022年12月8日記事参照)、EV普及に伴って移動式充電器の需要増加が期待される。設置型充電器でも、テラスパワー(本社:カリフォルニア州ラグーナヒルズ)が外装デザインなどを簡素化することで従来の機器を大幅に下回る価格を実現するなど、新興企業の動向に注目が集まっている。

写真 アイスペックスによる移動式充電器(ジェトロ撮影)

アイスペックスによる移動式充電器(ジェトロ撮影)

(大原典子)

(米国)

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