全米自動車協会、EVに特化したロードサービス開始

(米国)

ニューヨーク発

2022年12月08日

自動車のロードサービスを提供する全米自動車協会(AAA)は12月1日、電気自動車(EV)の所有者向けに、モバイル充電など新たなサービスを展開すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

AAAは米国とカナダで車両事故など緊急時の支援や旅行関連の保険サービスなどを提供する非営利団体で、会員6,300万人のうち30万人はEV所有者となっている。AAAの自動車ソリューション担当マネジングディレクターのクリフ・ルード氏は「われわれは、EV購入といった大きな決断をする際にも、会員を支援することを約束する。自動車メーカーがEVに先進的なスタイリングと最新の革新的技術を搭載し続ける中、われわれは会員が運転する車両について学び、開発し、サービスを提供することに全力を注いでいる」と述べ、EV普及に伴って事業を展開していく意向を示した。

AAAが今回発表したサービスの1つが、EV用モバイル充電器を装備したトラックによる充電サービスだ。平均20~30分で10~20マイル(約16~32キロ)分の充電が可能で、最寄りの充電施設まで移動できるようにする。会員ならば、このサービスに対する追加料金は発生しない。EV普及を阻む最大の障壁とみられる航続距離への不安を解消することが目的だという。カリフォルニア州サンフランシスコのほか、テネシー州、フロリダ州、ノースカロライナ州、ミシガン州、インディアナ州、マサチューセッツ州、ペンシルベニア州、ロードアイランド州、コロラド州、オレゴン州などの計15都市で既にパイロットサービスが始動している。

また、AAAは業界関係者に対して、チュートリアルあるいはビデオ形式でEVに安全なロードサービスを提供するテクニックを紹介している。EVの車両事故では、バッテリー火災によって損傷したセル内で温度と圧力が制御されない状態で上昇する「熱暴走(Thermal Runaway)」が起こるなど、ガソリン車にはない特有の現象が発生するため、取り扱いに当たっては新たな知識の習得が課題となっている(2022年6月9日記事参照)。そのほか、充電施設の案内や目的地情報などの情報を盛り込んだロードトリップを計画するデジタルツールも提供する。AAAの自動車エンジニアリング担当ディレクターのグレッグ・ブラノン氏は「EVは未来の輸送手段だ。車両モデルと航続距離が改善されるにつれ、多くの人々にとってより現実的な選択肢になる」と述べている。

(大原典子)

(米国)

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