西村経済産業相が米ワシントンで講演、経済安保での同志国間協力を強調

(米国、日本)

ニューヨーク発

2023年01月06日

訪米した西村康稔経済産業相は1月5日、米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)で「幻想を打破した後の新しい秩序の構築」と題する講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行った。西村経済産業相は講演で、日本が議長国となる2023年のG7の優先課題や将来の経済秩序に関する考えを示した。

西村経済産業相は、冷戦の終結から30年以上が経過した後、経済的相互依存は世界のリスクを増大させたと指摘した。「(経済的相互依存が世界を平和にするという冷戦後の)われわれの想定は紛れもなく幻想だった」と述べ、新型コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻などが短期間で起きていることは警鐘だと言及した。その上で、これらの世界的ショックから学ぶべき教訓として、(1)政治体制としての権威主義が依然として強固に存在していること、(2)経済成長により得られた豊富な資金と高度な技術が権威主義的なルールの下では外交や軍事に利用されていること、(3)経済安全保障の重要性を挙げた。

西村経済産業相はこれらの教訓に基づいて、自由で開かれたインド太平洋を構築する必要性を強調した。具体的に強化すべき3つの分野として、経済安全保障、同志国間の全面的な協力、抑止力を提示した。

経済安全保障を巡っては、産業や日常生活にとって不可欠な物資や技術の供給を特定の国に過度に依存することに警鐘を鳴らすとともに、半導体やバイオ技術などの新興技術に関わるイノベーションへの大胆な投資における日米協力を訴えた。重要・新興技術の悪用や不適切な移転に対処するため、輸出管理での協力強化も重要として、日本は米国やそのほかの関係国と協議しながら、国際協力に基づく厳格な輸出管理を実施すると説いた。また、サプライチェーンの強靭(きょうじん)化にも触れ、半導体の国内生産や重要鉱物の供給源の多様化、エネルギー・食糧安全保障に関わる日本の取り組みを紹介した。他方、「強靭なサプライチェーンの実現には時間がかかる」とも指摘し、大きな市場を持つ国による輸入制限措置などを問題視し、2023年のG7ではそうした経済的威圧行為への対応も主要議題になると言明した。

同志国間の協力に関しては、各国が産業政策で連携することが重要と訴えた。経済安全保障に関する課題に対処する上では、保護主義に陥ることがないよう呼び掛けた。日米関係では、2022年7月に初会合が行なわれた日米経済政策協議委員会(経済版2プラス2、EPCC)が果たす役割を強調した(2022年8月1日記事参照)。「ビジネスと人権」の分野でも、日米協力を進展させる意向を示した。米国主導の経済圏構想であるインド太平洋経済枠組み(IPEF)については、日本は交渉の早期妥結のために努力を惜しまないと主張した。

レモンド米商務長官と会談、岸田首相の訪米など議論

西村経済産業相はCSISでの講演前に、米国のジーナ・レモンド商務長官と会談した。商務省の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、両閣僚は1月に予定されている日本の岸田文雄首相の訪米(2023年1月5日記事参照)などについて協議した。また、研究開発や輸出管理などを通じて重要・新興技術を促進・保護するための協力の重要性のほか、日米商務・産業パートナーシップ(JUCIP、2022年5月6日記事参照)、EPCC、IPEFなどの取り組みの進捗も議論した。

(甲斐野裕之)

(米国、日本)

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