米ニューヨーク市、住宅建設基準の緩和発表、今後10年間で50万戸供給増を目指す

(米国)

ニューヨーク発

2022年12月12日

米国ニューヨーク(NY)市は12月8日、住宅建設の基準緩和計画を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)し、今後10年間で50万戸の住宅供給増を目指すとした。NY市は約850万の人口を抱える全米最大の都市で、2022年8月の賃料中央値は全米1位の月額約4,000ドルと、前年から約40%上昇している(2022年9月5日記事参照)。住宅供給を増やすことで住宅価格や賃料を手頃なものにする狙いがある。

この計画は、建設承認の透明化と迅速化、小規模住宅建設の環境アセスメント評価書からの除外、ゾーニング(住宅区画認定)承認プロセスの改革、防火システム管理の消防局から建築局への移行などが柱となっている。また、高止まりするNY市のオフィス空室率〔2022年第3四半期(7~9月)時点で16.4%〕を踏まえ(2022年10月12日記事参照)、老朽化したオフィスの住宅への転用促進も盛り込んだ。計画の約半数は今後12カ月で実施される予定で、そのほかのほとんどについても24カ月までに実装予定としている。この計画により建築プロジェクトのタイムラインはこれまでより50%の短縮化が見込まれるとしている。計画発表に当たって会見したエリック・アダムズNY市長は「過去10年間でNY市では約80万の人口増加があったが、その間の住宅供給は20万戸にすぎない」「100年前には75万戸の住宅が建設されており、過去10年間に建設された数の3倍を超える」と述べ、今回の計画での50万戸という目標住宅供給数の妥当性を強調した。

NY市では、住宅価格や賃料高止まりにより、生活が困窮して路上生活を余儀なくされる人(いわゆるホームレス)が増えているとされている。非営利団体のシティリミッツによると、11月末時点で約6万6,000人のホームレスが市の用意した一時避難所に入っているとされ、年初と比べると約2万人増加している。ホームレス増加に派生して、地下鉄での凶悪犯罪も増加するなど、治安も悪化しており、駐在員が住みやすい都市ランキングでもNY市は50都市中16位にとどまっている。アダムズ市長は11月29日、地下鉄などで暮らす重度の精神疾患を持つホームレスに対し、病院などのケアを提供する計画を発表している(2022年12月2日記事参照)。

(宮野慶太)

(米国)

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