デジタルノマドビザ、地方再生のツールとしても期待

(ポルトガル、スペイン、エストニア)

マドリード発

2023年01月10日

ポルトガル政府は2022年10月30日、「国外からの専門的リモートワーカー査証」(通称「デジタルノマドビザ」)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを導入した。

デジタルノマドとは、ITを活用し、国内外を旅しながら働く人材のこと。隣国のスペインでも、2023年1月にデジタルノマドビザを導入(2021年12月14日記事参照)。欧州では、同様の制度の導入が広がっており、エストニアでは2020年7月から施行されている(2020年6月8日記事参照)。社会のデジタル化が急ピッチで進む中、欧州各国政府は、国内で不足する高度IT人材の誘致に強い関心を示している。

ポルトガルのデジタルノマドビザは、外国人法(外国人の入国、滞在、出国、および国外への移動に関する法制度)におけるビザの手続きが簡素化され、2022年8月に改正・公布されたもの。

「デジタルノマドビザ」を取得した者は、一定期間「リモートワーカー」としてポルトガルに居住しながら、働くことができる。デジタルノマドビザを取得するためには、まずは「居住ビザ」を取得して入国し、有効期限の4カ月以内にデジタルノマドとしての滞在許可申請を行う。デジタルノマドビザの有効期限は2年間で、連続して3年間の更新が可能。

「デジタルノマドビザ」の取得要件は、欧州経済領域(EEA)(注)以外の国籍保有者で、ITなどの高度技能を持つ、被雇用者あるいは自営業者。また、ポルトガルの最低賃金(2022年は月額705ユーロ)の4倍以上の月収(2,820ユーロ以上)を自国で得ていることが必要。

成功モデルは地域レベルの官民連携ワーケーション誘致活動

デジタルノマドビザは、地方再生のツールにもなり得る。大西洋のバカンス先、近年はワーケーション先として人気のポルトガル領マデイラ諸島の自治政府は、今回の法改正に先立つ2021年2月からスタートアップ・エコシステム推進機関「スタートアップ・マデイラ」を通じて、パイロットプロジェクト「デジタルノマド・マデイラ・アイランド外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を実施してきた。これはデジタルノマドを地元企業や住民と融合させ、社会的、経済的に強いプラスの影響を与えるコミュニティーを構築することを目的とした取り組みで、2024年まで継続の予定。マデイラ島の人口8,000人の村ポンタ・ド・ソルでは、最初の1年で6,000人以上のデジタルノマドを誘致し、推定3,000万ユーロの経済効果をもたらしたという。

アントニオ・コスタ首相は、2022年11月にリスボンで開催された、欧州最大規模のスタートアップイベント「ウェブサミット2022」(2022年11月11日記事参照)で、「ポルトガルはデジタルノマドと外国人投資家にとって魅力的な国だ」と述べ、同ビザがデジタルノマドや投資家に新しい機会を生み出したことを強調した。

(注)EU加盟国とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン。

(小野恵美、森友梨)

(ポルトガル、スペイン、エストニア)

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