日本企業のメキシコ投資が拡大、ニアショアリングの流れが追い風に

(メキシコ、日本)

メキシコ発

2023年01月18日

新型コロナウイルス禍で低迷していたメキシコへの対内直接投資が、米国市場をターゲットとした、メキシコの地理的利点である「ニアショアリング」という条件により、回復してきている(2022年11月28日記事参照)。事実、これを受け、メキシコ製造業の生産は増大している。「ニアショアリング」という条件を好機と捉える外国企業による対メキシコの直接投資は今後、増加する可能性がありそうだ。

メキシコの製造技術協会(ATM)のラテンアメリカ代表カルロス・モルテラ氏は「メキシコ製造業の2022年生産額は約2,400億ドルとなり、2021年と比較して12%増加している。これはラテンアメリカにおける生産額の40%以上を占める。米国市場はサプライチェーンの移転に伴う生産需要が拡大し、中小企業の設備の稼働率が90%を超えている。その点でメキシコにもチャンスがある。米国市場のニアショアリング先として有利なメキシコでは、製造業の生産が増大しており、非常に好ましいことだ」と述べた(「レフォルマ」紙1月17日)。

英国バークレイズ銀行の調査によると、2022年のメキシコへの対内直接投資は400億ドルを超えると予想されている(2022年12月12日記事参照)。そうした中、北米地域での事業拡大を見込み、メキシコへの投資を発表した日本企業が増加している。特に日本企業のメキシコ製造業投資案件は2022年後半から見られ、今後ますます増えてくると予想される。

12月16日付プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、フジテックはエレバドーレス・EV・インターナショナル(EEVI)の発行済み株式の85%を取得した。EEVIは北西部国境都市のティファナに工場を有し、北米の昇降機事業者への豊富な輸出実績があり、メキシコ国内でもローカルブランドとしてトップシェアを誇る。フジテックはEEVIが製造する機器を活用しつつ、北米でのコスト競争力を強化することで、北米での事業拡大を図るために今回の株式取得を行ったとしている。

住江織物は1月13日、メキシコ子会社のスミノエ・テキスタイル・デ・メヒコの自動車内装材向け合成皮革製造ライン新設のために、グアナファト州イラプアト市に用地を取得し、工場と倉庫機能を持つ新建屋の建設を開始したと発表した(1月13日付同社プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。投資総額は約30億円で、生産性向上と効率化を図り、北中米の合成皮革市場の拡大に対応するためとしている。新建屋の完成は2023年11月で、2024年6月に量産を開始する予定だ。

(阿部眞弘)

(メキシコ、日本)

ビジネス短信 09d4c88898cd3c72