経済相、米国商務長官と北米への企業移転機会を捉えた投資誘致強化で合意

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2022年12月12日

メキシコのラケル・ブエンロストロ経済相は12月2日、米国ワシントンでジーナ・レモンド米国商務長官とサプライチェーン強化に関する会談を行った。会談では、アジアからメキシコを含む北米への企業移転と、プリント基板や半導体のサプライチェーン強化が議題にあがった。メキシコ経済省のプレスリリースによると、アジアからの企業移転が活発化している点は、メキシコを含む北米経済の強化と統合において歴史的な機会だとし、両相はハイレベル経済対話(HLED)を通じてより良い投資誘致条件を生み出し、メキシコへの新たな投資誘致を加速するための協調を強化することに合意した。なお、前回のHLEDは9月12日にメキシコ市で開催されている(2022年9月14日記事参照)。

ブエンロストロ経済相は「メキシコには技術面や専門・研究分野でさまざまな訓練を受けた労働力があり、新たな進出企業が必要とする労働力を育成するために組織間で調整するメカニズムがある」と発言した。同相はまた、法人設立に必要な許認可や手続きの調整、随行、簡素化をするために、経済省が投資誘致のためワンストップセンターとしての役割を果たすことの重要性を付け加えた。さらにメキシコ経済省と米商務省が、企業誘致のために両国が提供可能なビジネス機会や経済的なメリット、税制上のメリットを広報するために2023年1~2月に共同でプレゼンを行うことも、ブエンロストロ経済相は明らかにしている。

ニアショアリングの影響で2022年の対内直接投資は400億ドルを超えると予想

メキシコの対内直接投資においては、パンデミックによって発生したサプライチェーンの分断によるニアショアリングの流れが指摘されている(2022年11月28日記事参照)。現地コンサルティング会社のデ・ラ・カジェ・マドラゾ・マンセナの代表で、元経済財務次官のルイス・デ・ラ・カジェ氏はUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に関するフォーラムにおいて、「ニアショアリングでのメキシコの大きな利点は、北米、欧州、アジア太平洋、ラテンアメリカと同時に統合できる唯一の新興国であり、中国、インド、ブラジル、インドネシアなどの競合にはまねできないことだ。もう1つの大きな利点は、米国と国境を接するメキシコの地理的な位置であり、物流面での優位性を民間部門とともに促進する必要ある。メキシコが必要とする最も重要なことは米国東部との新たな国境開放(国際航路の整備、注)だ。これによりメキシコ南部地域の開発が活発になるため、USMCAの恩恵は国内の16~17州にとどまらず、32州すべてに広がる」との趣旨の発言を行った。

英国バークレイズ銀行の調査は、メキシコへの投資移転はすでに始まっていると分析している。同調査によると、世界における2021年の直接投資受入額でメキシコは10位となり、ドイツの直接投資受入額をわずかに上回った。メキシコの直接投資受入額は過去22年間の平均266億ドルを上回り、2022年上半期のみで275億ドルを記録している。同銀行の調査は「2022年末には400億ドルを超えると予想している」と指摘している(「エル・フィナンシエロ」紙12月5日)。

(注)メキシコ湾に面するメキシコのベラクルス州やユカタン州など、南部地域から米国の主にフロリダ州を結ぶ航路のことを指し、そこから米国東部に製品を供給することを意味する。

(阿部眞弘)

(メキシコ、米国)

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