中国衛生当局、防疫措置実施上の問題で、より精密で温かみのある対応を強調

(中国)

北京発

2022年12月01日

中国国務院共同防疫メカニズムは11月29日、「新型コロナウイルス感染拡大の予防抑制措置をよりいっそう合理化し、科学的で精密な防疫を徹底する通知外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(「防疫20条」、2022年11月15日記事参照)などの防疫措置の実施状況について説明した。

防疫当局は、現在新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)感染が全国的に拡大の傾向にあり、一部の地域は新型コロナ感染拡大が始まって以降最も複雑で厳しい状況にあるとの認識を示した。その上で、防疫措置について、措置の単純化や措置の実施段階で新たな規制が加えられていること、事情を踏まえない一律の対応(「一刀切」)や市民の申し立てを軽視していること、などの問題が一般市民から寄せられているとした。具体的には、一部地方が、封鎖区域や対象者の範囲を勝手に拡大していること、封鎖の指示を出すのみで対象者に対して生活上のサポートを行わないこと、長期間にわたり封鎖を解除しないこと、などを取り上げた(注1)。

防疫当局によると、各地方ではすでにこうした問題に対応する特別チームが立ち上げられており、国務院共同防疫メカニズムも一般市民から寄せられた問題について積極的かつ有効に対応し、地方政府にも解決するよう促しているとした。

さらに、一部の地方の防疫措置が精密でないため市民生活に大きな影響を与えており、国の政策にも合致していないこと、現場の作業スタッフの対応に柔軟性が欠けており、忍耐力に乏しく、市民との円滑なコミュニケーションが取れずにトラブルを大きくしてしまう事例があること、少数の地方では新型コロナに関する情報公開が遅く不十分なため、市民の誤解を招きやすいことなどを代表的な問題として指摘した。地方の共産党委員会や政府に対しては管轄責任を果たし、全国統一の防疫措置を厳格に執行するよう求めた。国務院共同防疫メカニズムとしては市民から寄せられた緊急的な問題に迅速・効果的に対応し、防疫の各種の取り組みをより精密に、より温かみのあるものにしていくと強調した(注2)。

これまで一貫して「ダイナミックゼロコロナ」(注3)堅持を主張している中国共産党機関紙「人民日報」も、防疫20条の実施を進めるとともに市民生活の保障をより温かみをもって行うことによって、防疫の取り組みがより強力で効果的なものとなると指摘している(「人民日報」11月22日)。

(注1)防疫20条などの措置の各地での運用に関する問題については、在中国のEU・欧州各国商会も在中外資系企業に影響を与えているとして、中央政府に対し意見書を提出している(2022年11月30日記事参照)。

(注2)防疫措置の実施における市民生活への影響を考慮したとみられる事例としては、長期間在宅している高齢者や毎日オンライン授業を受ける学生、在宅勤務者など社会面(封鎖管理区域以外のエリア)で活動していない人を全員PCR検査の対象から除外する動き(広東省広州市や北京市の一部の区、河南省鄭州市など)、病院の緊急外来や産科などを不必要に封鎖することの禁止(北京市)、条件を満たす濃厚接触者に対する自宅隔離の容認の動き(広東省)などがある。

(注3)中国政府当局や中国の防疫対応に携わる専門家の説明によると、「ダイナミックゼロコロナ」とは国内の「感染者の発生をゼロにする」ものではなく、感染者の能動的かつ迅速な発見を行い、感染者に対して速やかに疫学的調査、診断、隔離、治療を行い、コミュニティー(社区)内で持続的に感染が広がることを防ぐ防疫戦略を指す。

(小宮昇平)

(中国)

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