議会選第1次投票の投票率は11.22%で革命後最低

(チュニジア)

パリ発

2022年12月22日

チュニジアでは12月17日、161議席を選出する国民代表議会選挙の第1次投票が行われた。投票率は11.22%で、7月25日に行われた憲法改正の国民投票(2022年7月28日記事参照)での30.5%を大幅に下回った。高等独立選挙委員会(ISIE)によると、候補者が1人の選挙区や候補者が絶対過半数を獲得した選挙区などでは当選者が決まったが、それ以外の131選挙区で第2次投票が行われ、2023年3月3日に最終結果が発表される。

8月16日発効の新憲法下で初めて行われた今回の議会選挙の投票率は、2011年の革命後最低を記録した。その原因として、ISIEは、9月15日の選挙法改正によって選挙運動に対する公的資金の補助が廃止され、地味な選挙キャンペーンになったことや、立候補の要件が厳格化されたため(注)、知名度の高い候補者が立候補できず、かつ、選挙運動は候補者の個人名義で行い、政党名を出さないという条件も課せられて、有権者の投票意欲が下がったことを挙げている。また、報道によると、カイス・サイード大統領の政治は民主主義を逸脱していると訴える野党や労働組合、知識層などが選挙ボイコットを呼びかけたことも大きく影響を与えた。投票終了後、野党は直ちにサイード大統領を強く批判し、大統領に即刻辞任を求めている。

さらに、サイード大統領の一連の政策で大統領に権力が集中して議会の権限は限定され、政治に対する失望感が強まる中、国立統計研究所(INS)によると、11月のインフレ率が9.8%に上り、国民の最大の関心事は生活費の高騰で、選挙への関心が極めて低いと報道されている。2019年10月6日に行われた前回の議会選挙で党派乱立となった後(2019年10月23日記事参照)、同月13日に当選したサイード大統領は2021年7月25日に議会との対立構造から脱却するため、首相解任と議会機能の一時停止を発表し(2021年7月28日記事参照)、2022年3月30日には議会を解散した(2022年4月7日記事参照)。

(注)新選挙法によると、議員の候補者はチュニジア国籍のみを持つことを義務付け、400人の後援署名が必要となる。また、政府閣僚や裁判官、外交官、イスラム教指導者(イマーム)、スポーツ協会の会長などはそれらの職を離れて1年後に立候補が可能となった。

(渡辺智子)

(チュニジア)

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