無党派のサイード氏が大統領選で勝利、党派乱立の議会運営は難航か

(チュニジア)

パリ発

2019年10月23日

チュニジア大統領選挙(2019年10月2日記事参照)の決選投票が10月13日に行われ、17日に独立高等選挙委員会(ISIE)が最終結果を発表した。法学者のカイス・サイード氏が72.7%の得票率で約278万票を獲得して当選した。対立候補のナビル・カルウィ氏(27.3%、約104万票)を大きく引き離し、2011年の革命後、国民投票による2代目の大統領に選出された。チュニジア国営通信社TAPが報じた(10月17日)。9月15日の大統領選の投票率は45%だったが、決選投票はそれを上回る57.8%を記録した。EU選挙監視派遣団は、2011年からのアラブ地域の民主化におけるチュニジアの優位性を確固たるものにしたと評価した。

サイード氏は革命後の新憲法制定に参画した憲法学者として知名度は高かったが、政治家としては無名だった。無党派としてどの政党からの後援も拒み、若者を中心としたボランティアと地道な選挙戦を展開した。一方、カルウィ氏はテレビ局ネスマのオーナーで知名度は高かったが、脱税とマネーロンダリングの疑いで選挙戦開始の直前に逮捕された。同氏が党首を務める新党カルブ・トゥネス(チュニジアの心)が党首不在の選挙戦を進めるという異例の展開となった。決選投票日の4日前の10月9日に釈放され、11日には国営テレビで放映された討論会に参加。候補者が直接議論した唯一の場となった。

今回の大統領選は、法に基づく厳格で透明な政治と地方主権を訴え、自ら厳格さと透明性を体現したサイード氏が大勝する結果となった。両候補が共通して重要視したのは、「2011年の革命以後、経済的に置き去りにされた地方」だ。革命から8年が経過したチュニジアでは、民主政治が浸透した一方で、物価の高騰、若者の高失業率、汚職などの問題が特に経済的に脆弱(ぜいじゃく)な地方の住民を苦しめていた。今回の結果は具体的な対策を講じられない現政権への反発ともみられる。

国民議会選挙の結果、党派乱立の状態に

10月6日には国民議会(定数217)選挙も行われた。第1党となったイスラム穏健派のアンナハダ党は前回から17議席を失い、52議席にとどまった。一方、大統領選で敗退したカルウィ氏が党首を務める新党のカルブ・トゥネス党が38議席を獲得して第2党に躍進した。18党がひしめき合う議会構成となり、アンナハダ党を中心とするイスラム系保守派、カルブ・トゥネス党を中心にとした急進派中道、民主党(アッタヤール)を中心とした左派のいずれも過半数に達しなかった(「ジュヌ・アフリーク」10月12日)。無党派の大統領と党派乱立の議会の誕生で、今後の組閣や国会運営は難航が予想される。

(渡辺智子)

(チュニジア)

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