次期EU議長国スウェーデン、安全保障などを優先事項に

(スウェーデン、EU)

ロンドン発

2022年12月22日

スウェーデン政府は12月14日、EU理事会(閣僚理事会)の次期議長国として、4つの優先事項とプログラムを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(詳細はEU理事会ウェブサイト参照PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。ウルフ・クリステション首相は同国議会で行った演説で、より環境に優しく、より安全で、より自由なEUとなることが優先事項の基盤と述べた。また、EUの電化に向けた努力を優先させるとし、新たなバッテリー規則(2022年12月13日記事参照)に向けた取り組みや、化石燃料を使用しないエネルギー生産の拡大に関する交渉の継続を具体例として挙げた。さらに、ロシア産化石燃料を他の低炭素エネルギー源に置き換える施策を進めるとした。

スウェーデンが掲げた4つの優先事項とその概要は以下のとおり。

  • 安全保障:ウクライナに対する経済的・軍事的支援の継続と、EU加盟への道筋に向けた支援を優先させる。ただし、加盟については国家やEUレベルでのさらなる取り組みが必要であり、復興や改革に向けた動きが必要。また、欧州の安全保障と防衛政策に関するコンセンサスの構築が不可欠。さらに、国境を越える集団犯罪への対応を継続。
  • 競争力:自由競争、民間投資、デジタル化に基づく、安定した、かつ開かれた経済とするための取り組みを継続。
  • グリーン、エネルギー移行:野心的な気候変動目標を達成し、成長と競争力を高めるために、「Fit for 55」(2021年7月15日記事参照)を実行に移し、エネルギー転換を加速させる。
  • 民主的価値観と法の支配:結束、個人の自由、無差別などの民主的価値観に基づき、法の支配と基本的権利の原則を保護。

競争力の強化の文脈では、ビジネス部門のグリーン、デジタル移行に関する取り組みの重要性も挙げた。そのために自動車の排ガス規制「Euro 7」(2022年11月11日記事参照)の見直しや、欧州半導体法(2022年2月10日記事参照)などを優先するとした。

一方で、デジタル分野の法制に関しては、非常に曖昧な内容にとどまったという指摘があるほか(「ユーラクティブ」12月14日)、与党が閣外協力するEU懐疑派のスウェーデン民主党からは移民や犯罪、法の支配に関する取り組みが過少との指摘も出ていると報じられている(「ポリティコ」12月14日)。

(島村英莉、篠崎美佐)

(スウェーデン、EU)

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