EU、バッテリー規則案に政治合意、2024年から順次適用へ

(EU)

ブリュッセル発

2022年12月13日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は12月9日、現行のバッテリー指令(2006年発効)を大幅に改正するバッテリー規則案の暫定的な政治合意に達したと発表した(EU理事会プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。規則案は欧州委員会が2020年12月に提案し(2020年12月14日記事参照)、EU理事会と欧州議会が2022年3月にそれぞれの立場を採択して、両機関による交渉が進められてきた。今回の政治合意により、自動車用、産業用、携帯型などEU域内で販売される全てのバッテリーを対象に、EUが掲げる循環型経済の理念に基づき、カーボンフットプリントの申告義務や上限値の導入、原材料のリサイクルなどに関し、バッテリーのライフサイクル全体に及ぶ包括的な規制が成立することになる。今後、両機関による正式な採択を経て2023年早期の施行が見込まれ、2024年から順次、規定された適用開始時期に従って各種義務が適用される。

コバルトやリチウムのリサイクル済み原材料使用を当初案より厳しく設定

EU理事会の発表では、廃棄された携帯型バッテリーの回収率や、原材料別の再資源化率(material recovery rate)、リサイクル済み原材料の最低使用割合などの数値が示された(合意されたテキストは12月12日時点で未発表)。

廃棄された携帯型バッテリーの回収率は2027年末までに63%、2030年末までに73%の達成が製造者またはその責任者に求められる。欧州委の当初案では2025年末に65%、2030年末までに70%だった(注1)。原材料別の再資源化率では、リチウムの再資源化率の目標値を2027年までに50%、2031年までに80%と設定。欧州委の当初案の、2025年までに35%、2030年までに70%よりも野心的な数値となった。ただし、同目標値はリチウムの市場状況や再資源化手法の技術的な発展に応じて委任立法によって修正できる。リサイクル済み原材料の最低使用割合は、施行時ではコバルト16%、鉛85%、リチウム・ニッケル各6%で合意した。当初案とはコバルト(12%)、リチウム、ニッケル(各4%)の数値が変更になった。産業界など各ステークホルダーの立場を考慮しつつ(2022年2月1日記事参照)、全体では高い目標値が設定された。

産業用バッテリー(2キロワット時を超えるもの)と、電動自転車・スクーター用バッテリー、全ての電気自動車(EV)用バッテリーは「バッテリーパスポート」と名付けられた電子上の記録を介してバッテリーの性能や耐久性、カーボンフットプリントなどに関する情報へのアクセスを確保しなければならないことも決定したが、制度の詳細は今後制定される委任法令に規定されることになる。QRコードを利用したバッテリー情報の開示義務は規則施行後42カ月後に適用開始となる(注2)。

その他、合意案には、責任ある原材料調達などサプライチェーンに対するデューディリジェンスの義務化も含まれた。

(注1)当初案は2022年初の規則施行を前提に達成年が設定されている。

(注2)バッテリーパスポートは必ずしもQRコード使用を想定していないものの、EU理事会はQRコードによる情報の開示義務とバッテリーパスポート制度の連動を提案している。

(安田啓)

(EU)

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