カタール・エナジーと米コノコフィリップス、ドイツ向けLNGの長期供給で合意
(ドイツ、カタール、米国)
デュッセルドルフ発
2022年12月07日
カタール国営カタール・エナジーと米国石油大手コノコフィリップスは11月29日、カタールからドイツ向けに年間最大200万トンの液化天然ガス(LNG)を供給する長期契約2件を締結したと発表した。ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候保護相は3月にカタールを訪問し、LNGの供給などでの連携について同国と交渉を行っていた(2022年3月29日記事参照)。
コノコフィリップスの完全子会社がLNGを購入し、現在建設中のドイツ北部シュレスビヒ・ホルシュタイン州ブルンスビュッテル市に設置される浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備(FSRU、注1)(2022年3月11日記事、2022年7月29日記事参照)に船積みする予定。カタールのガス田である「ノースフィールド」の東部(NFE)と南部(NFS)に権益を有する、両社の合弁会社2社からLNGを調達する。船積みの開始時期は2026年で、契約期間は最低15年間。今回の契約はカタールからドイツ向けの初のLNG長期供給で、ドイツの長期的なエネルギー安全保障に貢献する。コノコフィリップスはNFEプロジェクトの3.125%、NFSプロジェクトの6.25%のシェアを保有する。NFEは2026年、NFSは2027年に生産を開始する予定。
ドイツの天然ガス業界団体であるツークンフト・ガスのティム・ケーラー取締役は2022年11月29日、今回の契約締結を歓迎し、「ガス調達先の多様化に向けた長い道程の重要な第一歩だ。15年以上の長期供給は陸上LNGターミナルにとって良好な展望を開く」とした。一方、合意した容量は約30テラワット時(TWh)で、ドイツの年間需要の約3%程度にとどまる。ロシアがガスの供給を減少・停止するまで、ロシアからは500TWh弱のガス供給があっため、より多くの代替ガス調達が必要だ。同氏は「長期的な安定供給にはまだ遠い」と続けた。同氏はまた、現在建設中の陸上LNGターミナルは、特に、ガス産業の安定性あるグリーン産業への転換や、将来的な天然ガスから水素などのグリーンガスへの転換にとって非常に重要との認識を示した(注2)。
(注1)Floating Storage and Regasification Unitの略。陸上にLNG基地をつくらず、貯蔵・再ガス化設備を加えた専用船を洋上に係留する。
(注2)ドイツ政府は、LNG利用は一時的で、環境目的を達成するため、将来的にLNG用のインフラは水素用に転用する計画であり、2043年末以降も稼働するLNG設備は水素とその派生物用となる(2022年11月29日記事参照)。
(ベアナデット・マイヤー)
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