ドイツ、UAEと水素エネルギー分野での連携を加速

(ドイツ、アラブ首長国連邦、カタール、ロシア、ウクライナ)

デュッセルドルフ発

2022年03月29日

ドイツの経済・気候保護省は3月21日、アラブ首長国連邦(UAE)との水素分野での協力を強化すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ロベルト・ハーベック経済・気候保護相が経済代表団とともに同国を訪問し、水素分野での連携に関して4件のプロジェクトと1件の研究協力について合意が成された(添付資料表参照)。現在、ロシアのウクライナ軍事侵攻を背景に、ドイツのエネルギー安全保障の確保が課題となっている。ドイツはグリーン水素(注)の製造に関する活動を強化する方針で、水素の普及が早いほど天然ガスの必要量が減り、長期的には、ロシアから輸入する天然ガスといった化石燃料を代替することが期待される。

今回合意が成された案件のうち、ドイツのエネルギー大手ユニパーやアブダビ国営石油会社(ADNOC)などが実施する、UAEからドイツ北部ウィルヘルムスハーフェン港へのグリーン水素の輸送実証プロジェクトには、日本のJERA(本社:東京都中央区)の米国子会社JERAアメリカズも参加する。UAEは再生可能エネルギーから安価に水素を製造できる非常に良い条件を備えており、2022年内にドイツ向けの水素供給を実現する予定としている。

ハーベック経済・気候保護相は「水素供給網の加速的な拡大は持続可能なエネルギーへの転換の非常に重要なカギとなる」と両国の連携を歓迎し、両国の連携が「気候保護目標の達成に貢献すると同時に、エネルギー安全保障の強化にも貢献する」と評価した。

連邦政府は2020年に「国家水素戦略」(2020年9月9日付地域・分析レポート参照)を策定し、2030年までに年間最大300万トンのグリーン水素の需要創出を目指している。ただし、必要となるグリーン水素のうち大部分は輸入でまかなう予定だ。

また、ハーベック経済・気候保護相はUAE訪問に先立ち、カタールを訪問した。液化天然ガス(LNG)の供給や再生可能エネルギー分野での連携について同国と交渉を行った。なお、ドイツは天然ガスの供給国の多様化とロシアからの化石燃料依存(2022年3月22日記事参照)の脱却を目的として、ドイツ北部2カ所にLNGターミナルを建設中だ(2022年3月11日記事2022年3月15日記事参照)。

(注)再生可能エネルギー由来の電力を利用して、水を電気分解して生成される水素。製造過程で二酸化炭素を排出しない。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ、アラブ首長国連邦、カタール、ロシア、ウクライナ)

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