EU、森林破壊関連品の販売を規制する規則案に暫定合意
(EU)
欧州ロシアCIS課
2022年12月14日
EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は12月6日、森林破壊防止のためのデューディリジェンス義務化に関する規則案について暫定的な政治合意に達した(プレスリリース)。規則案は欧州委員会が2021年11月に提案し(2021年11月19日記事参照)、EU理事会は6月28日に(2022年7月7日記事参照)、欧州議会は9月13日にそれぞれ交渉上の「立場」を採択していた。
規則案は、気候変動対策と生物多様性の保護のため、EU域内で販売、もしくは域内から輸出する対象品が森林破壊によって開発された農地で生産されていないこと(「森林破壊フリー」)を確認するデューディリジェンスの実施を企業に義務付ける。違反した事業者には、EUでの年間総売上高の少なくとも4%の罰金を科する。
デューディリジェンス義務の対象となる商品作物はパーム油、牛肉、木材、コーヒー、カカオ、ゴム、大豆。また、対象産品を原料とする皮革、チョコレート、家具、印刷紙などの派生製品にも適用する。これらの対象品をEU市場に上市、供給、またはEUから輸出する事業者は事前に、その産品が「森林破壊フリー」で生産国の法令を順守していることを確認するデューディリジェンスを実施し、管轄する加盟国当局への報告が求められる。欧州委は規則の発効から2年以内に対象品などの見直しを行う。
暫定合意した規則案では、「森林破壊フリー」の基準について、欧州委の提案のとおり、対象品が2020年12月31日以降の森林破壊によって開発された農地で生産されていないこととした。デューディリジェンスの実施に当たって、事業者には対象品が生産された農地の情報まで確認することが求められる。ただし、事業者と検査を実施する加盟国当局の手続きが二重とならないように配慮するほか、中小企業などの小規模事業者は大規模事業者にデューディリジェンス報告の作成を依頼することも可能としている。また、欧州委の提案のとおり、各国・地域の森林破壊リスクのレベル分けを行うベンチマーク制度を導入し、「高リスク国」には監視を強化する一方、「低リスク国」についてはより簡素化したデューディリジェンスの実施を可能にする。
さらに、EU理事会と欧州議会は、国連食糧農業機関(FAO)の定義を基に「森林破壊」を定義することや、「森林劣化」とは自然再生林や原生林をプランテーション用地に転換するなど森林被覆を構造的に変化させると定義することで合意。先住民族の権利など人権保護に関する規定も盛り込んだ。
今回の暫定合意を受けて、EU理事会と欧州議会は今後、それぞれ規則案の正式な採択を行う。規則案はEU官報掲載から20日後に発効するが、一部規定は発効から18カ月後に適用が開始される。
(土屋朋美)
(EU)
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