米国、総額1兆6,580億ドルの2023年度本予算が成立へ、2022年度から1,440億ドル増

(米国)

ニューヨーク発

2022年12月26日

米国連邦下院議会は12月23日、2023年度(2022年10月1日~2023年9月30日)の本予算案を可決した。上院では前日に可決済み。バイデン大統領の署名により成立となる。米国では2回目のつなぎ予算が12月23日までを期限としており(2022年12月16日記事参照)、期限切れによる政府機関の一時閉鎖を避けるため、本予算の成立が急がれていた。

2023年度本予算の対象は義務的経費以外の裁量的経費(注1)で、議会審議資料によると、予算総額は前年度比1,440億ドル増の1兆6,580億ドルとなった。内訳は、国防費として前年度760億ドル増の8,580億ドルを計上した。非国防費は8,000億ドルを計上(前年度680億ドル増)しており、職業訓練強化や2010年度以来初めて全国労働関係委員会(NLRB、注2)に対する支援資金増額などを盛り込んだ労働、保健福祉、教育予算が2,268億ドル(前年度150億ドル)となったほか、退役軍人への医療サポートや女性の健康、ホームレス対策支援などを盛り込んだ軍事建設、退役軍人関係予算が3,227億ドル(前年度380億ドル増)などとなっている(添付資料表参照)。本予算には、ウクライナへの追加支援費用として449億ドル、国内で頻発する干ばつやハリケーン、洪水、山火事など自然災害の復旧費用として406億ドルも計上している。

また、本予算案には、人気アプリ「TikTok」の連邦政府の電子機器での使用禁止や退職後の税制優遇口座の引き出し開始年齢の引き上げ、2021年1月6日の連邦議会襲撃の原因にもなったと言われる選挙人集計法における副大統領の権限の明確化なども付随している。

気候変動対策では、途上国への支援として毎年30億ドルの拠出をバイデン政権は約束しているが(2021年11月4日記事参照)、本予算案では10億ドルしか認められなかった(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版12月24日)。また、バイデン政権は新型コロナウイルス対策の追加費用として92億5,000万ドルを要求していたが、議会ではこれは一切認めなかった(ブルームバーグ12月22日)。

2022年度予算は2022年3月10日に米議会で成立しており(2022年3月14日記事参照)、会計年度開始までに本予算が成立しないことが常態化している米国だが、前年度に比べると、2023年度は比較的早期に本予算が成立する見通しだ。これは、1月からは下院では共和党が多数派となるため、国防費増額など共和党からの要求を受け入れるなどして、民主党が年内の成立を急いだものと見られる。

(注1)連邦政府の歳出は社会保障などの義務的経費と、国防費などの裁量的経費に分けられる。単年度経費の裁量的経費の支出を行うには、毎年度、連邦議会による歳出予算法の制定による予算額の決定が必要となる。

(注2)民間企業の従業員の賃金や労働条件改善のために、労働組合の有無にかかわらず、労働者の権利を保護するために設立された独立連邦機関。

(宮野慶太)

(米国)

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