米NY州気候評議会、気候変動スコーピング計画発表、加州に類似のキャップ・アンド・インベスト制度導入を提案

(米国)

ニューヨーク発

2022年12月23日

米国ニューヨーク(NY)州気候評議会は1219日、気候変動スコーピング計画を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。同計画は年明けまでにキャシー・ホークル州知事(民主党)と州議会に送られ、さらに議論される見通し。

同計画では、従来の方針である2030年までに電力の70%を再生可能エネルギー電源で賄うことに加え(注1)、NY州の温室効果ガス(GHG)排出量を1990年比で40%削減することを目標に掲げている。また、2040年までに電力部門の完全なゼロエミッション化を実現するほか、2050年までにGHG排出量を1990年比で85%削減し、経済活動でのカーボンニュートラルを達成するとしている。

さらに、同計画はこれらの目標達成に向けた具体的措置を提言している。例えば、約100万~200万軒の家庭を2030年までにヒートポンプなどクリーンな冷暖房に移行することや、州内を走行するゼロエミッション車(ZEV)を約300万台増やし、2050年までに州内のほぼ全ての車両をZEV化すること、州内の住宅や商業用建物の85%をエネルギー効率の高いヒートポンプや熱エネルギーを用いて電化することなどを求めている。ZEVについては、ホークル知事が929日に、カリフォルニア(加)州(2022年9月1日記事参照)に追随するかたちで、2035年までに新たに販売する全ての乗用車、ピックアップトラック、スポーツ用多目的車(SUV)をZEVとする措置を発表している。

また、同計画では、加州のキャップ・アンド・トレード(注2)に類似したキャップ・アンド・インベスト制度の導入を提案している。これは、企業などに対し、当局が許容するGHG排出量の上限を設定し、上限を下回った分の排出の市場売却を認める一方、上回った場合はその分を市場で購入するなどによって、上限枠の順守を求める制度だ。このプログラムで得た収益の少なくとも35%は、気候変動により不利益を被っているコミュニティーなどへの支援に充てるとしている。

NY州によると、今回の計画が実行されれば、再生可能エネルギーや送電網の開発に350億ドル超、建物からの排出削減に68億ドルを含む、合わせて460億ドル以上の投資がもたらされると見込んでいる。

(注120229月時点の再生可能エネルギー比率(原子力含む)は約48%。

(注2)詳しくは、ジェトロ調査レポート「米国・カリフォルニア州の気候変動対策と産業・企業の対応」PDFファイル(1.6MB)p.12を参照。

(宮野慶太)

(米国)

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