2022年は高成長戦略の一方で、低金利政策により国内経済は混乱
(トルコ)
イスタンブール発
2022年12月27日
2022年のトルコ経済は、新型コロナ禍でも生産を維持してきたことが功を奏し、上半期に好調だった外需が雇用を支え、個人消費が成長を牽引した。一方で、中国を中心としたアジアのサプライチェーンの混乱が欧州市場に近接するトルコの輸出産業全体に好影響を与えたかたちだった。
ロシアのウクライナ侵攻に対しては、トルコはNATO加盟国でありながら、欧米の対ロシア制裁に参加することなく、外交上の仲介姿勢をもって、エネルギーや商品物流の代替ルートを提示するなどの独自路線を見せた。報道によると、観光部門では、通貨安もあり、国外からの観光客が増加し、新型コロナ禍からの回復を見せた。
トルコの2022年の実質GDP成長率は、第1四半期(1~3月)は7.5%、第2四半期(4~6月)は7.7%の高成長だった。しかし、レジェップ・タイップ・エルドアン大統領が実践する生産や雇用、輸出を優先するための低金利政策は、マクロ経済の不均衡を拡大させ、消費者物価指数
は年間を通じて高騰、11月の上昇率は前年同期比84.4%となった。
中央銀行は2022年8月以降、4期連続で政策金利を引き下げ、11月段階で9%とした。結果として、実質的なマイナス金利は拡大した。インフレ抑制を犠牲にした成長戦略は通貨トルコ・リラ安による外需に依存するところが大きいが、下半期に入って欧州への輸出の減少が足かせとなり、貿易・経常赤字は拡大した。第3四半期(7~9月)の実質GDPは前期比でマイナス0.1%、前年同期比で3.9%の成長にとどまった(2022年12月5日記事参照)。
政府は、金融政策に関しては外貨需要の抑制を中心に、新規リラ建て預金者に対し、利子に加えて為替相場下落分を補填(ほてん)するなどの調整や介入を繰り返した。財政面では、カタールやサウジアラビアなど湾岸諸国からの支援を受けていると報じられた。しかし、フィッチ・レーティングスなどの格付け機関は銀行部門のリファイナンスリスクに警告を発している。
他方、為替市場での通貨下落(2022年初から28%の下落)もあり、M&A案件は金融サービスやスタートアップ系が好調だった。スタートアップでは、アブダビ政府系ファンドのムバダラ・インベストメントが主導した日用品配送プラットフォームのゲティルの資金調達(2022年3月24日記事参照)などがあった。湾岸からの買収案件は過去5年間で最高レベルに達しており、前述のゲティルのほか、アブダビのIHCによるカリヨン・エナジー(再生可能エネルギー)の株式50%買収などがあった。
(中島敏博)
(トルコ)
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