米エネルギー省、クリーン水素技術開発に7億5,000万ドル拠出を発表

(米国)

ニューヨーク発

2022年12月22日

米国エネルギー省(DOE)は1216日、クリーン水素(注)技術開発支援に75,000万ドルを拠出すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。当該予算はインフラ投資雇用法(2021年11月9日記事参照)から手当てされる。

対象となるプロジェクトは、電解槽を使用して製造するクリーン水素の製造コストを、2026年までに1キログラム当たり2ドル未満への削減に寄与する研究開発や、クリーン水素の再利用促進に資する研究開発など。DOE20216月に、クリーン水素の製造コストを10年以内に80%削減し、1キログラム1ドルにまで引き下げる目標を設定しており、対象プロジェクトの要件はこれを踏まえたものになっている。資金は2022会計年度(202110月~20229月)にさかのぼり、2026会計年度(202510月~20269月)までの5年間にわたって拠出される。

クリーン水素技術の推進については、インフラ投資雇用法で、クリーン水素製造ハブ設立促進のための80億ドルなど、今回の措置も含めて95億ドルが手当てされている。また、8月に成立したインフレ削減法(2022年10月6日付地域・分析レポート参照)でも、クリーン水素製造の温室効果ガス(GHG)排出強度(注2)に応じて、水素1キログラム0.012ドルから0.6ドルの範囲で税額控除できる制度が新設されている。

こうした財政支援もあり、民間でクリーン水素開発の動きが加速している。ガス大手エアープロダクツ・アンド・ケミカルズとグリーン水素の製造施設建設プロジェクト開発を行うAESは、テキサス州に日量200トンのグリーン水素を製造可能な施設を建設すると発表しているほか(2022年12月9日記事参照)、燃料電池システム開発のプラグパワーは、大型商用電気自動車(EV)メーカーのニコラと、グリーン水素を日量最大125トンまで供給する契約を締結している(2022年12月16日記事参照)。

生成した水素は石油精製や金属処理、肥料製造、食品加工など、さまざまな産業で使用されており、その中でも特徴的な用途としては、燃料電池や燃料自動車(FCV)への使用や水素を燃料とした発電などが挙げられる。DOEによると、前述のクリーン水素製造コストが1キログラム1ドルに下がった場合、クリーン水素の使用量は現状から5倍に増加し、2050年までの二酸化炭素(CO2)排出量は16%削減されると試算している。さらに、2030年までに1,400億ドルの経済効果と70万人の雇用を生み出す可能性があるとしている。

(注1)水素はその製造方法によって、(1)化石燃料を燃焼させたガスを改質することで製造する「グレー水素」、(2)グレー水素製造工程で排出された二酸化炭素(CO2)を回収し貯留または利用(CCSCCUS)することでCO2排出を抑える「ブルー水素」、(3)再生可能エネルギーを利用して水を電気分解することで製造し、製造工程でCO2を発生させない「グリーン水素」などに分かれる。ここでのクリーン水素は(3)に該当。

(注2)一定量のクリーン水素を製造する際に排出されるGHGの量。

(宮野慶太)

(米国)

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