前倒し大統領選挙、現職トカエフ氏が再選

(カザフスタン)

タシケント発

2022年11月28日

カザフスタンで1120日、前倒し大統領選挙が行われ、現職のカシムジョマルト・トカエフ氏が再選された。9月の憲法改正により任期は7年で、再選が禁止されたため、次期の大統領選には立候補できない(2022年9月7日記事9月21日記事参照)。

1121日の中央選挙管理委員会の暫定結果発表によると、投票率は69.44%(添付資料表1参照)。大統領選挙候補者6人中、トカエフ氏は得票率81.31%を獲得し、他の候補者は1桁台にとどまった(添付資料表2参照)。また、今回の選挙で採用された「誰も支持しない」票は5.8%で、トカエフ氏得票率に次いで多かった。

今回の選挙結果について、世界経済政治研究所専門家のアルマン・トクトゥシャコフ氏は「投票率が高く、国民の選挙への関心がうかがえる。現職大統領の得票率の高さは改革と安定への支持の表れだ」と述べている(ニュースサイト「ザコン.kz1121日)。

一方、大都市部では投票率が低く、20221月に発生した全国規模の暴動(2022121日記事参照)で最も被害が大きかったアルマトイ市の投票率は30%を下回った。民間の社会科学研究所「アリテルナティワ(選択)」のアンドレイ・チェボタレフ氏は、トカエフ氏に対抗する候補者の中に国民を引きつけるだけの政策、主張がみられなかったこと、野党候補者が統一候補を立てることができなかったことなどが投票率に影響したとみる(ザコン.kz 1121日)。応用民族政治研究所のタルガト・カリエフ所長はSNS「テレグラム」の自身のページ(1121日)において、むしろ投票に消極的なアルマトイでさえ、30%の投票率があったことは驚くべきことと指摘した。その要因として、20221月の暴動や、ロシアによるウクライナ侵攻に衝撃を受けた市民が多く、これまで以上に自分たちの生活の安定と幸福を重視するようになったこと、30年にわたり鬱積(うっせき)してきた政治や統治体制の変革を求める民意がある、と分析した。

国民クリルタイ(注)メンバーで政治学者のダニヤル・アシンバエフ氏は、今回の大統領選でトカエフ氏の政策や改革が信認されたと評価するとともに、2023年の下院選挙と地方議会選挙を経て一連の改革が完了する、と述べた。

写真 投票所入口。午前中から多くの市民が足を運んでいる(ジェトロ撮影)

投票所入口。午前中から多くの市民が足を運んでいる(ジェトロ撮影)

写真 大統領候補者を紹介する掲示板(ジェトロ撮影)

大統領候補者を紹介する掲示板(ジェトロ撮影)

(注)2022年に発足した国民議会で、大統領直轄の諮問機関。国民の結束を固め、国家を強化するための施策を策定する。メンバーには議員、政府関係者、企業団体、専門家コミュニティーなど幅広い分野から選ばれる。

(増島繁延)

(カザフスタン)

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