政府、ガス安定供給のためガスプロム元子会社を国有化へ

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2022年11月24日

ドイツ経済・気候保護省(BMWK)は1114日、セキュアリング・エナジー・フォー・ヨーロッパ(SEFE)をエネルギー確保法に基づき国有すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。SEFEの旧社名はガスプロム・ゲルマニアで、ロシア国有ガス会社ガスプロムの元ドイツ子会社。同社は債務超過のため破産の恐れがあり、ドイツ国内のエネルギーの安定供給を脅かしていた。今回の国有化はドイツ国内の天然ガスの安定供給確保が目的で、エネルギー危機に関連する国有化はエネルギー大手ユニパー(2022928日記事参照)に続き2社目だ。

SEFEは、ドイツのガス供給における重要な企業だ。子会社には、ドイツ国内全体のガス貯蔵量の約5分の1に相当するガス貯蔵施設を運営するアストラや、主に地方自治体や地域のガス供給事業者などにガスを供給する国内最大のガス供給事業者であるウィンガスが含まれる。ウィンガスのドイツでのガス供給市場占有率は約20%にのぼり、同社が破産した場合は地方自治体などが急きょ代わりのガスを調達せざるを得なくなり、破産の連鎖や供給不足が懸念される。

旧ガスプロム・ゲルマニアは、44日に連邦ネットワーク庁の信託管理下に置かれたのち、620日以降、SEFEとの社名で活動している。一方、同社の株式の所有者が現在まで不透明なままであるため、取引先や銀行は既存の取引関係を中止、または新たに取引関係を結ばない方針を取っている。そのため事業活動の継続が脅かされている。

これに対し、BMWKは、3つの措置を取り国有化を完了させるとともに、SEFEの経営を安定させる。すなわち、(1)従来からの株式資本をゼロにすることで(減資)、これまでの株主が権利を失う。その後、政府が保有するSEFEへの増資のために設立された会社が資本を注入し、同社がSEFEの単独株主となり、所有者の変更が完了する。なお、新株式の発行は既に欧州委員会による承認を受けている。(2)旧ガスプロム・ゲルマニアは6月に、流動性の確保を目的に、ドイツ復興金融公庫(KfW)から118億ユーロの融資を受けたが、ガス賦課金の取りやめ(20221011日記事参照)を補填(ほてん)するため、融資が今後、138億ユーロに増額される。(32022年末までにデットエクイティスワップ(債務と株式の交換)を実施し、KfWの融資の大部分を、株式交換を通じ自己資本に転換させる予定。融資の残りは、引き続き外部資本として利用可能だ。デットエクイティスワップの実施には欧州委員会の承認が必要なため、BMWKは現在、欧州委員会と集中的に議論を進めている。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ)

ビジネス短信 d8d272b6ec45e9f0