ガス賦課金導入は取りやめ、VAT引き下げなどで負担減、原発稼働延長も

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2022年10月11日

ドイツ連邦政府は9月30日、天然ガスへの賦課金(2022年9月28日記事参照)に関し、同賦課金の導入取りやめを閣議決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。政府が29日に発表した2,000億ユーロ規模のエネルギー価格高騰に対する支援策外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが、賦課金の効果的かつ包括的な代替措置となるためだ。

また、連邦参議院(上院)は10月7日、天然ガスと地域熱供給への付加価値税(VAT)の一時的な引き下げ法案を承認外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。天然ガスのVAT税率引き下げは政府が8月に計画を発表していたが、同法案の連邦議会(下院)での審議の過程で地域熱供給も引き下げ対象と修正された。法律の成立により、天然ガスと地域熱供給へのVATは、10月1日から2024年3月末まで、標準税率(19%)ではなく軽減税率(7%)が適用される(注)。政府はガスや地域熱供給の事業者に対し、VATの引き下げ分を消費者に全額還元するよう求めている。連邦エネルギー・水道事業連合会(BDEW)は、天然ガスと地域熱供給のVAT税率引き下げを「正しくかつ重要な対策」として歓迎の一方、電力へのVAT税率も7%に引き下げるよう引き続き提唱するとした。

原発は稼働延長へ、ガス節約や石炭・褐炭発電所稼働に向け法整備

ロベルト・ハーベック経済・気候保護相と原子力発電所「イーザル2」と「ネッカーベストハイム2」の運営者(2022年9月13日記事参照)は9月27日、稼働延長について合意外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2022年12月31日の通常の運転期間終了後、この2基は予備電源として最長2023年4月15日まで稼働できる。実際の稼働の要否は2022年中に決定の予定だ。2023年1月以降、「イーザル2」は約2テラワット時(TWh)、「ネッカーベストハイム2」は約1.7TWhの発電量との試算。なお、「イーザル2」は遅くとも10月末までに1週間程度、修理のための稼働停止が必要だ。

また、連邦政府は9月28日、2つの政令を閣議決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。電力供給の増強や、ガス以外の発電拡大によるガス節約が目的だ。1つ目は、予備電源として停止中の褐炭火力発電所の一時的な再稼働に関する政令。同政令により、予備電源の褐炭火力発電所は「ガスに関する緊急計画」に基づき、レベル1~3のうちレベル2「警報(alert)」またはレベル3「緊急(emergency)」が発令されている場合(2022年7月4日記事参照)、2022年10月1日から2023年6月30日まで再稼働できることになった。再稼働される褐炭火力発電所の合計出力は1.9ギガワット。再稼働の具体的な時期は発電事業者が決める。2つ目は、予備電源の火力発電所を稼働させる場合には、稼働期間終了日を2023年4月30日から2024年3月31日まで延長する政令。これは、主に石炭火力発電所が対象だ。

(注)同法律は10月1日にさかのぼって適用されるため、天然ガスと地域熱供給のVATは10月1日から軽減税率が適用される。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ)

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