エネルギー大手ユニパーを国有化へ、ガス賦課金は暫定的導入

(ドイツ、ロシア)

デュッセルドルフ発

2022年09月28日

ドイツ経済・気候保護省は9月21日、連邦政府による同国エネルギー大手ユニパーの国有化の計画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。国有化に向け、連邦政府とユニパー、同社主要株主であるフィンランドの電力大手フォータムの3者間で7月22日に合意していた救済措置(2022年8月2日記事参照)の内容を改める。

ユニパーの国有化は、8月31日以降、「ノルドストリーム1」の修理を理由にロシア産天然ガスの供給が完全に停止され、ガス価格も高騰したことにより、代替ガス調達のための追加資金が必要になったことが背景にある。ユニパーの資金需要が大幅に増加し、窮状がさらに悪化していた。ユニパーが扱うガスのうち、ロシア産天然ガスは50%を占める。また、同社はドイツ国内の天然ガスの40%を供給している。同社の国有化により、ドイツ国内へのエネルギーの安定供給を目指す。

具体的な国有化スキームは、7月に合意された80億ユーロ規模の支援(財政支援のうち、ユニパーの自己資本としてみなすことができる分)に関し、予定していた株式の30%の取得と転換社積ではなく、1株当たり1.7ユーロで株式の93%を取得する。また、フォータムが保有する株式を、1株当たり1.7ユーロ、合計4億8,000万ユーロで取得する。これにより、連邦政府はユニパーの株式の約98.6%を保有することになる。ユニパーの株主総会や欧州委員会の承認などが必要なため、株式の取得自体は法令上の要件を満たした後に実施される。

そのほか今回、上述の80億ユーロの増資が完了するまで、ドイツ復興金融公庫(KfW)が必要に応じて融資などの支援をユニパーに提供することが合意された。ユニパーは8月29日、KfWの与信枠を90億ユーロから130億ユーロへの拡大を求める申請をし、9月21日時点で既に110億ユーロの枠を使用した。追加の融資の必要性は、10月1日から導入予定のガス賦課金(2022年8月24日記事参照)を財源としたユニパーへの補填(ほてん)時期や、市場の情勢と同社の利益の推移によるとした。さらに、ユニパーの取締役の報酬制限や株主への配当禁止などを含む、7月に合意した条件は引き続き適用される。

なお、救済措置の実施のための手続き完了までには通常約3カ月かかるため、7月に合意した株式の取得は未実施だった。ロベルト・ハーベック経済・気候保護相は、9月21日の記者会見で、今回改正した救済措置も実施まで約3カ月かかると指摘した。また、国有企業がガス賦課金を財源とする支払いを享受することと基本法(憲法)との整合性の問題については、この問題を所管する連邦財務省による評価を経て再検討するとした。加えて、ガス賦課金の導入は予定どおり10月1日から行うと述べたが、ユニパーの国有化が実現するまでの間、暫定的に導入すると説明した。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ、ロシア)

ビジネス短信 5d820de98e526b1b