キルギスIT産業セミナーが開催、今後の協力発展に期待

(キルギス、日本)

欧州ロシアCIS課

2022年11月14日

ジェトロは、キルギス政府・IT産業界代表者の訪日を機に、10月末から11月初旬にかけ福岡、大阪、名古屋、東京の4カ所で、3月に開催したウェビナー(2022年3月9日記事参照)で登壇した講師を迎え、キルギスのIT産業や進出事例を紹介するセミナーと個別相談会を実施した(注1)。

1部「キルギスの魅力・経済のポテンシャル」では、ジェトロ・タシケント事務所長の高橋淳がキルギスの概況について、キルギス共和国大統領府のアルマズ・イサノフ政治経済研究局長がキルギスの投資環境に関して講演した。

キルギスは「中央アジアのスイス」とも呼ばれる景観の美しい山岳国で、人口650万人の約8割が35歳未満という若い人口構成が特徴だ。主力産業だった金の生産が減少する中、観光、教育、IT、医療分野の振興に力を入れている。202219月のGDP成長率は前年同期比7.2%と好調だが、さらなる成長のため、イサノフ局長はデータセンターの設置や光ファイバー網を整備する計画を明らかにした。

2部の「キルギスIT業界の実力」では、キルギス・ソフトウェア開発協会(KSSDA)およびキルギス・ハイテクロノジー・パーク(HTP)創設者のアジズ・アバキロフ氏、KSSDAのアビゲイル・ミナシ最高経営責任者(CEO)、HTPのチュバク・テミロフ代表と、キルギスに進出する日系IT企業プライサー・ビシュケクの小松由弥代表、現地で教育事業を行うジャパンスタイル(2020年3月13日記事参照)の四橋道徳代表社員が登壇した。

KSSDAのミナシCEOは、IT産業におけるキルギスの優位性として、a. 技術力、b. コミュニケーション能力、c. コスト競争力、d. インターネット環境を挙げた。協会では現在、海外企業向けにラボ型オフショア開発(注2)のサービス提供を推進している。IT人材の育成にも力を入れている。

HTPは、国の支援で設立されたバーチャルパークだ。キルギスのどこからでも入居可能で、税制面で優遇措置を受けることができる(2020年3月19日記事参照)。デミロフ代表によると、現在の入居企業数は206社。3月時点から62%増加した。入居企業の収益の98%が輸出で、最大の輸出先は米国で全体の40%を占める。セミナー後、デミロフ代表はジェトロに対し、IT人材の数や入居企業の売上高を倍増させていきたいと述べた。

HTPに入居するプライサー・ビシュケクの小松氏は、HTP入居に際して、事業内容の9割以上が指定のIT関連業務で、売り上げの8割以上を輸出するなどの条件を満たす必要があるとした。また、高速光通信のインターネット料金が割高だと指摘した。ジャパンスタイルの四橋氏は、9月にアラバエフ・キルギス国立大学日本学院にIT学科を新設し、CADオペレーターをはじめとするIT人材養成に力を入れていくと述べた。

最後に閉会のあいさつで、前・駐キルギス日本大使の前田茂樹氏が、本日紹介されたキルギスの様々な優位点に触れた上で、このセミナーが今後の両国のITビジネスにおける協力発展に結びつくことを期待すると締めくくった。

写真 キルギスの投資環境について講演するキルギス大統領府のイサノフ政治経済研究局長(ジェトロ撮影)

キルギスの投資環境について講演するキルギス大統領府のイサノフ政治経済研究局長(ジェトロ撮影)

写真 セミナー会場の様子(ジェトロ撮影)

セミナー会場の様子(ジェトロ撮影)

写真 個別相談会で参加者の質問に答えるHTPのチュバク・テミロフ代表(ジェトロ撮影)

個別相談会で参加者の質問に答えるHTPのチュバク・テミロフ代表(ジェトロ撮影)

(注1112日に東京会場で行われた内容。東京会場のみセミナーをオンラインでライブ配信した。

(注2)日本国内に拠点を構える会社が、海外にあるオフショア開発会社に専属の開発チームを持つこと。

(小林圭子)

(キルギス、日本)

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