高い評価受けるキルギスIT企業の潜在力

(キルギス、日本)

欧州ロシアCIS課

2022年03月09日

キルギスは中央アジアにある人口650万人の国だ。旧ソ連の構成国だが、近年はIT産業が注目を浴びている。ジェトロは在キルギス日本大使館協力の下、3月3日にキルギスITウェビナーを開催した。

ウェビナーの冒頭、前田茂樹・駐キルギス大使はキルギスとの有望なビジネス分野はITだと述べた。前田大使はその理由として、a.旧ソ連の国でありながらコンテンツに関する規制がほとんどなく、インターネット環境が良い、b.日本語を学ぶ学生も多く、真面目で謙虚な性格は日本人との親和性が高い、c.米国などがキルギスIT産業の潜在力を評価し、ビジネスを拡大していることを挙げた。

キルギス・ソフトウエア開発協会(KSSDA)の創設者アジス・アバキロフ氏は「キルギスのITインフラは先進国並みだ。米国シリコンバレー企業のアウトソーシング先に選ばれている」と述べた。同協会のアビゲイル・ミナシ代表は、a.税の優遇措置を受けて安価で高品質な世界に通用するITサービスを提供している、b.2021年に開発されたソフトの8割が米国、カナダなど30カ国を超える市場に輸出されたと補足した

ハイテクノロジー・パーク(HTP)のチュワク・テミロフ代表によると、HTPはバーチャルな機関で、輸出型IT企業、コールセンターなどHTP入居者は付加価値税(VAT)や法人税などの免除、従業員の所得税や社会保障税の減額などの優遇措置が提供されている。その代わり、企業は売上高の1%をHTPに拠出する必要がある。入居企業は現在127社、従業員数は1,300人、2021年の売上高は2,500万ドルと説明した。

キルギスIT企業として、カンダのアンドレイ・グリノフ最高技術責任者(CTO)は、日本の保険会社向けに音声システムを利用して代理店が迅速に書類に記入できるモバイルアプリを開発した経験を語った。マドデブスのアナトリ・フェドレンコ代表も、金融、教育、運輸などの分野で拡張性のあるソフトウエアを開発していると述べた。

日本のIT企業プライサーは2019年8月にキルギスに進出した。現地スタッフは28人。プライサー・ビシュケクの小松由弥代表は、日本でIT人材の確保が困難な中、知人の紹介でキルギス人エンジニアを採用したことがきっかけだったと当時を振り返る。同氏は、a.HTPの入居企業はキルギス国内のどこにいても税制優遇を受けられる、b.今後熟達した人材の層が厚くなるだろうし、進出は当社にとって将来的に大きな意味を持つとコメントした。

ビシケクで日本語教育、日本への人材送り出しなどを行うジャパンスタイルの四橋道徳代表はIT人材育成について、a.日本での就労を目指す学生のためアラバエフ・キルギス国立大学付属日本学院を2016年9月に開校、b.国立大学本体のコンピュータ学科で日本語教育を行っているが、付属日本学院でも2022年9月からIT学科を新たに設置し、CADオペレーターなどの育成を目指すとしている。

ウェビナーの最後にミルラン・アルスタンバエフ駐日キルギス大使があいさつし、キルギスは日本との連携強化を重要視しており、国交樹立30年の節目に開催されたこのイベントが両国の新たな関係を構築する契機となることを祈念すると結んだ。

写真 (写真上・左)前田茂樹大使、(写真上・中)キルギス・ソフトウェア開発協会創設者アジズ・アバキロフ氏、(写真上・右)キルギス・ソフトウェア開発協会アビゲイル・ミナシ代表、(写真中・左)キルギス・ハイテクノロジー・パーク(HTP)チュバク・テミロフ代表、(写真中・中)カンダ社アンドレイ・グリノフCTO、(写真中・右)マドデブス社アナトリ・フェドレンコ代表、(写真下・左)プライサー・ビシュケク小松由弥代表、(写真下・中)ジャパンスタイル四橋道徳代表、(写真下・右)ミルラン・アルスタンバエフ駐日キルギス大使(全てジェトロ撮影)

(写真上・左)前田茂樹大使、(写真上・中)キルギス・ソフトウェア開発協会創設者アジズ・アバキロフ氏、(写真上・右)キルギス・ソフトウェア開発協会アビゲイル・ミナシ代表、(写真中・左)キルギス・ハイテクノロジー・パーク(HTP)チュバク・テミロフ代表、(写真中・中)カンダ社アンドレイ・グリノフCTO、(写真中・右)マドデブス社アナトリ・フェドレンコ代表、(写真下・左)プライサー・ビシュケク小松由弥代表、(写真下・中)ジャパンスタイル四橋道徳代表、(写真下・右)ミルラン・アルスタンバエフ駐日キルギス大使(全てジェトロ撮影)

(今津恵保)

(キルギス、日本)

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