米NY州、新型コロナ禍でオピオイドによる死亡者急増、2021年は約5,000人

(米国)

ニューヨーク発

2022年11月04日

米国ニューヨーク(NY)州のトーマス・ディナポリ監査官は11月1日、新型コロナウイルス禍で州内の薬物過剰摂取による死亡者が急増したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。それによると、NY州の薬物過剰接種による死亡者は2021年に5,841人と、2019年の3,617人から1.61倍となっている。そのうち、オピオイドによる死亡者が大半を占め、2019年の2,939人から2021年に1.69倍の4,946人となった。2010年からの統計をみると、NY州のオピオイドによる死亡者数は、連邦政府がオピオイドによる公衆衛生の緊急事態宣言を発表(2019年9月17日付地域・分析レポート参照)した2017年までは右上がりだったが、それ以降、2019年にかけて緩やかな下降傾向であった。しかし、2019年から急上昇し始めた。発表によると、2020年には全国で330万人に当たる18~25歳の若年層のうちの9.7%が深刻な精神疾病を経験したが、治療を受けたのは60%に満たなかったとし、このような背景が薬物依存症と過剰摂取による死亡につながっている可能性があるとしている。

過剰摂取による死亡率は、人種別では毎年、白人が最も多いが、10万人当たりの死亡率は2019年以降、特に黒人とラテン系で急上昇している。問題となっているオピオイドは鎮痛剤で、医師の処方箋をもって薬局で購入することができる。オピオイドを巡っては、州など地方自治体が薬局や製薬会社に対する訴訟を起こしており、11月2日にCVSヘルスとウォルグリーン・ブーツ・アライアンスは、行政機関が起こした訴訟に対して和解金を支払うこと発表した(2022年11月4日記事参照)。NY州では特に、フェンタニルなどの合成オピオイドにほかの薬物を混合したものが州内の薬物過剰摂取による死亡者数の増加につながっており、2010年には薬物過剰摂取による死亡者数全体の11%だったものが、2021年には78%に上昇したとされる。米疾病予防管理センター(CDC)によると、フェンタニルはヘロインの50倍、モルヒネの100倍の強度を持つとされる。これにほかの薬物を混合し、より強化されたものは、違法な流通でより安値で提供され、依存しやすく、危険度が極めて高いとされている。また、違法な流通では処方箋が必要ないため、健康保険を持たない多くの市民も入手しやすくなったと思われる。

(吉田奈津絵)

(米国)

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