紫金鉱業集団、カナダ企業の買収通じて炭酸リチウムの開発権獲得

(中国、カナダ、アルゼンチン)

上海発

2021年10月19日

中国の資源大手の紫金鉱業集団(本社:福建省)は10月10日、カナダの資源企業ネオ・リチウム(Neo Lithium)の全株式を約9億6,000万カナダ・ドル(約883億円、Cドル、1Cドル=約92円)で買収する契約を締結したと発表した。

ネオ・リチウムはカナダのトロント証券取引所に上場しており、主要資産はアルゼンチン西北部にあるトレス・ケブラダス塩湖の開発権だ。同開発権の面積は約353平方キロで、炭酸リチウムの埋蔵量は約757万トンと、世界5位の規模と推定される。また、同社は2021年6月に高純度電池級炭酸リチウムの精錬に成功しており、年間の生産量は現在の2万トンから4万~6万トンに拡大される予定だ。

紫金鉱業集団は国内外で亜鉛、銅、金など非鉄金属の採掘・製錬を広く手掛けているが、リチウム分野への進出は今回が初めてとなる。同社は買収の背景について「リチウムは新エネルギー分野の戦略的な鉱種であり、董事会で戦略的な資源として開拓していくことを決定した」としている。中国で進む電気自動車(EV)の普及が関係しているとみられる(「澎湃新聞」10月11日)。

中国では新エネルギー車の販売が好調で、9月の販売台数は前年同月の1.5倍となっている(2021年10月14日記事参照)。新エネルギー車のうち、EVの車載電池の製造に欠かせない原材料の炭酸リチウムの出荷単価は上昇しており、中国の調査会社の生意社によると、10月14日時点の炭酸リチウム出荷単価は7月17日時点に比べて97.7%上昇した。EV市場の拡大と炭酸リチウムの出荷単価の上昇により、今後さらに需給が逼迫する可能性がある。

(劉元森)

(中国、カナダ、アルゼンチン)

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