再生可能エネルギーの州別普及状況などの報告書公表
(ドイツ)
ミュンヘン発
2022年11月16日
ドイツの再生可能エネルギー法(EEG)で定められた「連邦・州協力委員会」は10月28日、再生可能エネルギーの普及の現状を分析する2022年の報告書を公表した。
EEGは「連邦・州協力委員会」が年に1度、ドイツの再エネ普及状況に関し、連邦政府に報告することを定めている。報告書は、州別の再エネ導入状況を中心に、特に陸上風力の状況に焦点を当てている(注1)。分析の結果、同報告書はEEGが定める「2030年に最終消費電力に占める再エネの割合を8割以上」の目標達成には、特に陸上風力のさらなる導入が必要と結論付けた。
報告書によると、2021年にドイツが新たに導入した陸上風力(注2)は1.7ギガワット(GW)、太陽光は5.6GW。陸上風力は北部のブランデンブルク州(0.4GW)、ニーダーザクセン州(0.4GW)、ノルトライン・ウェストファーレン州(0.3GW)、シュレスビヒ・ホルシュタイン州(0.2GW)が上位を占めた。太陽光は南部のバイエルン州(1.5GW)、ノルトライン・ウェストファーレン州(0.6GW)、バーデン・ビュルテンベルク州(0.6GW)などが多かった。2030年の電力需要は最大750テラワット時(TWh)と想定されており、EEGの定めに従ってその8割(600TWh)を再エネで賄うには、委員会は2021年の再エネ発電量234TWhを2.6倍まで高める必要があるとした。このために、新規導入を陸上風力は約6倍の10GW、太陽光は約4倍の22GWまで引き上げる必要があるという。
報告書はこのほか、(1)陸上風力法で「2027年末までに全土地面積の1.4%、2032年までに2%を風力発電事業用地とする」目標を定める一方、2021年12月末時点では0.81~0.91%にとどまること、(2)陸上風力発電所建設の申請を自治体に提出してから認可が下りるまで、ドイツ全体平均で24.8カ月を要しており、改善が必要なことなどを指摘した。
バイエルン州、風車建設に対する「10Hルール」緩和
バイエルン州では11月16日、陸上風力発電用の風車建設のための規制を一部緩和する改正法が施行される。具体的には、州建設令第82条はこれまで風車と近隣建物の距離について、風車の高さの10倍以上を確保することを定めていた(いわゆる「10Hルール」、2022年6月9日記事参照)。今回の改正により、アウトバーンや線路沿い、森林地域、工場地域などの一部地域では、風車の高さの10倍ではなく、最低1キロメール離せば風車の建設が可能となる。
バイエルン州はドイツ全体の太陽光発電量の27.3%(16.2GW、2021年末)を占める一方、陸上風力発電は4.6%(0.3GW、2021年末)にとどまる。EEGが定める目標達成のため、同州では陸上風力のさらなる拡大が期待されている。
(注1)今回の報告は原則、2021年を対象としたため、2023年1月施行の改正EEG、洋上風力エネルギー法、エネルギー産業法など「イースター・パッケージ」(2022年4月18日記事参照)の法律は考慮されていない。
(注2)新規導入の風力発電機の発電量に建て替え分を反映、停止分を控除したネットの導入量。
(クラウディア・フェンデル、高塚一)
(ドイツ)
ビジネス短信 2679107c56db5c09