ラマポーザ大統領、「公正なエネルギー移行投資計画」発表

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2022年11月16日

南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領は11月7日、「公正なエネルギー移行投資計画(JET-IP)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。これは、2021年の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で締結された「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」(2021年11月4日記事参照)に関連して、南アの脱炭素化に向けた今後5年間(2023~2027年)の投資計画をまとめたもので、同国のバーバラ・クリーシー林業・漁業・環境相が10月24日に言及していた(2022年10月28日記事参照)。今回の計画は、エジプトで開催中のCOP27(2022年11月7日記事参照)に先立って行われた会談で国際パートナーズグループ(IPG)(注1)に事前承認されており、重点分野として電力、新エネルギー車(NEV)、グリーン水素などが挙げられている(添付資料表参照)。

電力分野では、特に「電力統合資源計画(IRP)」(2019年10月29日記事参照)の見直しや、石炭火力発電所の閉鎖や再利用を含めた管理・運営、再生可能エネルギー移行への送電網の強化、配電システムの近代化を優先的に行う。石炭火力発電所閉鎖による雇用の損失が懸念されており、関連する労働者に配慮したエネルギー移行を目指す。

NEV分野では、充電インフラの整備やNEV部品サプライヤーへの資本増強、購入促進のインセンティブ付与など、NEVサプライチェーンの構築を通じ、雇用を守りながら持続可能な製造業を目指す計画だ。NEV導入支援として70億4,000万ランド(約570億2,400万円、1ランド=約8.1円)、技術革新に41億4,000万ランドの投資ニーズがあると試算されている。

グリーン水素に関しては、世界有数のグリーン水素輸出国になることを目標に、エコシステムの構築や技術の商業化、実証実験などに投資を行う予定。同産業の構築・発展によって、政府は2050 年までに、4,000 億ランドに相当する GDP 3.7%増を見込んでいる。

南ア政府の野心的な目標を達成するためには、5年間で約1兆4,800億ランドが必要だ。今後、JETP締結国は100億ランドの追加資金提供を予定している。既にドイツは個別に3億9,500万ユーロ(2022年10月24記事参照)、米国は「パワー・アフリカ」(注2)を通して4,500万ドル、欧州投資銀行(EIB)は南部アフリカ開発銀行(DBSA)に対して2億ユーロの融資を決定した。これを受けてDBSAは、融資される2億ユーロを含む4億ユーロを南アの再エネプロジェクトに融資することを予定している。

(注1)国際パートナーズグループ(IPG)とは、「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」を締結したフランス、ドイツ、英国、米国、EUが参加するグループ。英国が議長を務める。

(注2)米国政府が行うサブサハラ・アフリカでの電化率向上事業

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

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