習国家主席がショルツ首相と会談、新エネ、AI、デジタルで協力

(中国、ドイツ)

北京発

2022年11月08日

中国の習近平国家主席は11月4日、北京市でドイツのオラフ・ショルツ首相と会談した。習国家主席は、2022年が中独国交樹立50周年であることに言及し、これまでの成果を評価した上で、引き続き新エネルギー、人工知能(AI)、デジタル化などでの協力を活発化させるとした。また、欧州も含めて航空分野、新型コロナウイルス感染対策、グリーン発展、環境保護などでの交流強化を希望した。気候変動対策、生物多様性保護、食糧安全保障などのグローバルな課題解決での協力も求めた。

外交部の発表では、ショルツ首相は経済のグローバル化を支持するとともに「デカップリング」に反対し、引き続き中独企業の相互投資推進を支援するとした。また、世界は多極化を必要としており、新興国の役割と影響力を重視すべきとし、陣営対立に反対するとの認識を示した。

ウクライナ問題について習国家主席は、核兵器による威嚇やその使用に共同で反対すべきとした。また、サプライチェーンの安定、エネルギー、食糧、金融などでの協力が妨げられ、発展途上国の経済・財政の安定が損なわれることを防ぐべきとした。

外交部直属の研究機関である中国国際問題研究院欧州研究所の崔洪建所長は、国際情勢が大きく変化する中での今回のショルツ首相訪中は「強烈な政治的シグナルとなる」と評価した(「毎日経済新聞」11月4日)。

ショルツ首相の今回の訪中には、BASF、ワッカー・ケミー、BMW、フォルクスワーゲン(VW)、メルク、バイエル、ビオンテック、ドイツ銀行、GeoClimaDesign、シーメンス、HIPP、アディダスの12社からなる代表団が同行しており、参加者は約100人の申し込みから選別されたと報じられている(「21世紀経済報道」11月4日)。

近年、メルク、BMW、アウディ、BASF、フォルクスワーゲンなどドイツ大企業による対中投資が相次いでいる(注1)。中国側の統計では、2021年のドイツからの対中直接投資額(実行額)は、前年比24.4%増の16億8,000万ドルと堅調な伸びを示している(注2)。

一方で、EUからの投資額は10.4%減だった。中国EU商会は、国有企業改革の停滞や厳しい新型コロナウイルス感染対策により「中国の投資先としての地位が低下している」とし、欧州からの対中投資の多くは少数の大企業によるものと指摘している(2022年9月29日記事参照)。

(注1)メルク、BASF、フォルクスワーゲンについては2022年6月8日記事2022年9月21日記事2022年10月24日記事参照

(注2)なお、2021年の中国への対中直接投資額のうち香港が72.8%を占める。

(河野円洋)

(中国、ドイツ)

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