2022年3度目の利上げ実施も通貨安が進行

(モンゴル)

北京発

2022年11月08日

モンゴル銀行(BOM、中央銀行)が発表した公定為替レートの10月31日の終値は、1ドル=3,390.99トゥグルクとなり、前年同期比16.0%、前月比1.4%のトゥグルク安となった(添付資料図1参照)。

BOMの国際収支統計によると、モンゴルの国際収支は2022年4月にわずかに黒字になったことを除けば、2022年は赤字が続いている。また、経常収支は2021年12月以降の赤字が継続している。通貨安は、これら国際収支ならびに経常収支の赤字も一因となっている(添付資料図2参照)。

2022年に入って以降、BOMは3月(2022年4月19日記事参照)、6月(2022年6月28日記事参照)、9月(2022年10月14日記事参照)と3回の利上げを実施しているほか、6月2日から10月27日までに、18億ドル以上の外貨を供給(為替介入)しているが、通貨安は続いている。

外貨準備高は2022年1月以降減少しており、9月末には前年同月比33.2%減、前月比3.7%増の27億9,460万ドルとなった(添付資料図3参照)。これは、モンゴルの輸入決済の3~4カ月分の水準に相当し、IMFの推奨水準「輸入の3カ月分相当」を超過している。しかし、こうした外貨の減少を受けて、以前から外貨両替制限が実施されているといわれている(2022年4月27日記事参照)。

なお、BOMが発表した2022年第2四半期末時点のモンゴル全体の対外債務残高(注1)は332億6,045万ドルとなっており、そのうち借り入れセクター別にみると、政府が24.2%、BOMが7.5%を占めている(添付資料図4参照)。BOMによると、2022年6月末から1年以内に75億4,000万ドルの対外債務の期日が到来する。

モンゴル国会では現在、2023年度予算案を11月15日までに成立させるべく審議している。国会・予算委員会は10月19日、2023年度予算案に関する公開討論会(注2)を開催。ボルド・ジャブフラン大蔵相は公開討論会で、「政府の対外債務は計画どおりに返済されており、いかなる問題も生じえない」との立場を示した。

これに対し、野党・民主党会派は10月31日に記者会見を開き、民主党サルダン・オドントヤ―議員が「このような赤字予算案では、対外債務の返済は不可能だ」と非難した。

(注1)モンゴルの対外債務残高には、政府の国債、借款や中央銀行のスワップ枠のほか、金融機関、民間企業の社債、借入金、外国からの直接投資が含まれている。

(注2)国会の予算委員会は初の試みとして、10月7~17日に2023年度予算案に対する国民の意見を事前に募集し、10月19日に公開討論会で議論した。

(藤井一範)

(モンゴル)

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