米テキサス州の天然ガス、マイナス価格に

(米国)

ヒューストン発

2022年10月28日

米国パーミアン盆地内の天然ガスハブであるワハハブの天然ガス価格が、10月25日に100万英熱量単位(MMBtu)当たりマイナス2.25ドルまで下落した。複数の米国メディアが報じた。同盆地は、テキサス州西部とニューメキシコ州南東部の一部にまたがる広大な地域で、国内有数のシェールオイルとシェールガスの生産地として知られている。

ワハハブの価格下落の要因として、同盆地の旺盛な生産が、消費地へ送るためのパイプライン輸送網を圧倒し、引き取りの制約と衝突したことが挙げられている。また、米国の石油ガスパイプライン輸送大手キンダー・モーガンのパイプラインでは10月下旬からメンテナンスを実施しており、テキサス州のフリーポートLNG(液化天然ガス、FLNG)の火災事故による同施設の長期稼働停止の影響により、パーミアン盆地からFLNGまで天然ガスをパイプライン輸送できない点も要因に挙げられている(オイルガスジャーナル10月26日)。FLNGは11月に一部操業再開、2023年3月に完全稼働を目指すと発表している(2022年8月24日記事参照)。

なお、米国ヘンリーハブ・スポット価格(天然ガス先物価格)の平均が100万英熱量単位(MMBtu)当たり5ドル台で推移、欧州の天然ガス先物価格も25ドル以上で推移しており、今回の大幅な価格下落はワハハブのものに特有であることが分かる。

米国の天然ガス生産の最近の動向として、米国エネルギー情報局(EIA)は9月、米国の天然ガス生産者が2020年初めの新型コロナウイルスの国内発生時よりも、多くの掘削リグが稼動させており(2022年9月20日記事参照)、2021年にはパーミアン盆地に新たに設置された石油・ガス井の平均生産量(原油換算量)が過去最高の日量960バレルを記録した(2022年10月4日記事参照)ことを相次いで発表した。2022年10月には、2021年の天然ガス生産量が日量平均で前年比3.3%増の946億立方フィートとなり、過去最高を更新したと発表した(2022年10月13日記事参照)。

(沖本憲司)

(米国)

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