米USTR、対中301条関税の見直しに向けたパブコメを11月15日に開始へ

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年10月13日

米国通商代表部(USTR)は10月12日、1974年通商法301条に基づいて中国の原産品に課している追加関税(301条関税)について、見直しに向けたパブリックコメントを募集すると発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

対象となるのは、USTRがこれまで4回にわたって発動した301条関税のうち、2018年7月と8月に発動した最初の2回、いわゆるリスト1とリスト2。301条に基づく報復措置(今回の場合は追加関税)は、発動から4年間が満了する最後の60日間に、恩恵を受ける国内産業界から継続要望がなければ終了することになっている。USTRは2022年9月2日、国内産業界から継続の要望があったとして、リスト1とリスト2の301条関税を継続すると発表した(2022年9月5日記事参照)。パブコメは、米国東部時間の11月15日から2023年1月17日まで、USTRのポータルサイトで受け付ける。求めるコメントの内容について、サイト開設時にさらなる詳細を発表するとしているが、現時点では主に以下に関するコメントが期待されている。

  • 技術移転、知的財産、イノベーションに関する中国の行動、政策、慣行の撤廃を達成する、またはそれに対抗する上での301条関税(現行措置)の有効性。
  • それらの目的をより効果的に達成する上で取り得るそのほかの報復措置もしくは現行措置の修正。
  • 現行措置が米国の消費者を含む米国経済、設備投資、国内生産能力、生産水準、産業集積度、利益などの観点から国内製造業に与える影響。
  • 現行措置が米国の技術的リーダーシップや技術開発に与える影響。
  • 現行措置が米国の労働者(雇用や賃金の観点を含む)、中小企業、サプライチェーンの強靭(きょうじん)性に与える影響。
  • 現行措置が大統領令14017号や、その後の報告書および調査結果で指定した米国の重要なサプライチェーンの目標に与える影響。
  • 現行措置の結果、米国での製造に使われる中間財への追加関税が、それら中間財を組み込んだ下流の製品または最終製品への追加関税よりも高くなったかどうか。

米国の産業界やその後押しを受けた連邦議会議員らは以前から、301条関税は米国経済への追加コストであるとして、撤廃もしくは適用除外措置の拡大を求めてきた(2022年6月14日記事参照)。一方、鉄鋼業界の労働組合やそれら産業が集積する州から選出された対中強硬派の議員らは、中国の譲歩なしに301条関税を撤廃・緩和すれば交渉のテコを失うとして、強く反対している(2022年5月27日記事参照)。バイデン政権はそのような状況を受け、慎重な姿勢を維持してきた。2023年に入りどのような見直しが行われるのか、現時点では触れられていない残る301条関税のリスト3と4Aの扱いとともに、今後の動向が注目される。

(磯部真一)

(米国、中国)

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