全米小売業協会、バイデン政権に対中追加関税の撤廃を要請

(米国)

ニューヨーク発

2022年06月14日

全米小売業協会(NRF)は6月10日、トランプ前政権下で2018年に発動された中国製品に課する追加関税(301条関税)を撤廃するよう、バイデン政権に要請したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。NRFは5月にもバイデン政権に書簡を送り、歴史的な高インフレに対応するため、関税の早期撤廃を要請している。同日発表された直近5月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比8.6%上昇(2022年6月13日記事参照)と、1981年以来40年ぶりの高水準を記録したことを受け、政府に迅速な対応を求めた。

NRFのマシュー・シェイ会長兼最高経営責任者(CEO)は「独立系研究者や政府機関は、関税の廃止が米国の企業や労働者、消費者が日々直面している物価上昇の圧力を緩和する最速の方法であることに同意している」と述べた。また「FRB(連邦準備制度理事会)がインフレを食い止めるための長期戦略を続ける一方で、政権と議会はすぐに実行できる物価引き下げ策を進める必要がある」として、政権に早急な対応を取るよう強く促し、「関税撤廃はそのステップの1つであり、最も効果的で有意義なもの」と指摘した。

NRFによると、中国からの商品に対する関税は2018年以降、米国の輸入業者に1,365億ドルの負担を強いていると指摘している。また、追加関税リスト4対象品目には、衣類や履物、家電製品や玩具など消費財が多く含まれ、米国の平均的な家庭の負担額は年間1,200ドル以上に及ぶとしている。民間調査機関のPIIEによると、対象関税が撤廃された場合、CPIを0.3ポイント押し下げる効果があると試算されている。NRFは2022年4月からバイデン大統領と議会に対し、インフレ対策への取り組み強化を呼び掛けるようグラスルーツ活動を実施しており、対中関税の撤廃に加えて、米国海事法改正案の成立によるサプライチェーン危機の緩和や、移民法改正による労働力不足などへの対応を進めるよう促している。

米国のジャネット・イエレン財務長官は高インフレを緩和する手段として、中国からの輸入品に対する関税を再構成する方法を検討していると述べている。ただ、米国の個人消費の大部分は、外食や教育、医療などのサービスが占めており、消費に占める物品の割合は3分の1にすぎないため、関税政策がインフレ対策の万能薬になるとは考えていないとも述べた。イエレン財務長官は6月8日の下院歳入委員会の公聴会で、今後数週間のうちに政権の計画に関する追加情報が得られるとの見方を示した。

(樫葉さくら)

(米国)

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