高インフレによる実質所得低下で2022年上半期の極貧率が悪化
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2022年10月11日
アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は9月28日、世帯アンケート調査(EPH)の結果を発表した。2022年上半期の貧困率は36.5%で、前期比0.8ポイント減少したものの、極貧率は8.8%で、前期比0.6ポイント増加した(添付資料図参照)。INDECが半期ごとに実施しているEPHは国内31都市(人口約2,910万人)を対象にしており、今回の調査では、貧困人口が約1,060万人、うち極貧人口は260万人だった。
INDECによると、1世帯当たりの基礎的全体バスケット(CBT、基礎的食料・住宅・保健・教育・衣類その他の日常的かつ基礎的支出)は平均9万3,177ペソ(約9万5,972円、1ペソ=約1.03円)に上がり、この金額に満たない収入の世帯・人口を貧困層と見なす。今回の調査では、貧困世帯の平均収入は5万8,472ペソだった。1世帯当たりの基礎的食料バスケット(CBA、食料のみの基礎的支出)は4万857ペソで、この金額に満たない収入の世帯・人口を極貧層としている。極貧層世帯の平均収入は2万6,600ペソにとどまった。
年齢層別にみると、0~14歳の貧困率は50.9%で前期比0.5ポイント減少したものの、依然として高い水準だ。うち、極貧率は12.7%で前期比0.1ポイント微増した(添付資料表参照)。15~29歳と65歳以上の年齢層でも貧困率は減少したが、極貧率それぞれ1ポイントと1.2ポイント増加したことが特に目立った。
9月28日付の現地紙「ラ・ナシオン」によると、貧困率が減少した要因として、2022年第1四半期(1~3月)で建築業の復調や非正規雇用、自営業者などが増加したことで、1世帯当たりの収入源が増えたためとされる。しかし、その一方で、高インフレによってこれら労働者の実質所得が悪化したため、極貧人口が増えたと識者は分析している。第2四半期(4~6月)以降は非正規雇用の創出も落ち込み、6月以降のインフレ加速(2022年9月21日記事参照)によって、2022年下半期の貧困率・極貧率は共に悪化するとの見通しだ。
貧困率の発表直後、クリスティーナ・フェルナンデス副大統領は自身のツイッターで「(結果は)食料品の価格高騰の影響を受けている証拠だ。食品メーカーは利益率を大きく高めている。経済省の努力は認めるものの、このセクターで確実かつ明確な介入政策の導入が必要だ」と表明した。複数の報道は、副大統領のメッセージはセルヒオ・マッサ経済相のインフレ対策に対する不満を訴えているとの見方をしている。
ブエノスアイレス市内で、路上で物を売る高齢者(ジェトロ撮影)
(山木シルビア)
(アルゼンチン)
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