EU理事会、ガスへの上限価格の設定は平行線のまま、欧州委は10月18日に政策提案へ

(EU)

ブリュッセル発

2022年10月14日

EU理事会(閣僚理事会)は10月11~12日、エネルギー担当相の非公式会合を、2022年下半期議長国チェコの首都プラハで開催した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。今回の非公式会合では、エネルギー価格高騰への対応策が協議されたものの、7日の欧州理事会(EU首脳会議)(2022年10月11日記事参照)に続き、具体的な合意には至らなかった。一方で、非公式会合に参加した欧州委員会のカドリ・シムソン委員(エネルギー担当)は、会合後の記者会見で、新たな政策パッケージを18日にも発表する方針を明らかにした。議長国チェコによると、この政策パッケージは、25日のEU理事会(エネルギー担当相)の公式会合で協議され、その後に開催されるとみられる臨時会合での承認を目指すとしている。20~21日には欧州理事会も開催を予定していることから、今後EUがエネルギー価格の安定化に向けた具体的な措置で合意できるかが注目される。

シムソン委員によると、欧州委が提案を予定しているのは、以下の4点。

  1. ガス価格対応策:欧州委は既に、欧州の天然ガス価格の指標となっているTTF(Title Transfer Facility)はEUのエネルギー市場を正確に反映しておらず、価格が人為的に上げられているとして、補完的な価格指標を開発する旨を発表していた。10月18日の政策パッケージには、新たな価格指標に関する法案が含まれる予定だ。ただし、実際の運用開始は、2023年春以降、次の冬に向けたガス備蓄の開始時期になるとしている。また、加盟国間の対立が続くなど、最大の焦点となっているガス価格への上限の設定に関しては(2022年10月3日記事参照)、シムソン委員は詳細を明らかにしなかったものの、発電用天然ガスに限定した上限価格を設定する案を検討しているとあらためて述べた。18日の発表に先立ち、今週末にも加盟国の十分な支持が得られるよう調整を進めるとした。
  2. ガス需要削減策:EUでは、ガス需要削減規則(2022年8月9日記事参照)が8月に施行し、加盟国は国内ガス需要の15%を自主的に削減することが求められている。一方で、同規則は一定の手続きを踏むことで、15%の削減目標を義務化することができることから、この手続きを開始することが安定供給のための選択肢の1つだとした。他方、ガス価格対応策を実施し、ガス価格が低下した場合、ガス需要がむしろ増えかねないことから、同規則とは別に、ガス需要を抑制するための新たな措置を検討しているとした。
  3. EUレベルの連帯協定:EUでは、特定の加盟国においてガス供給が危機的状況に陥った場合に備えて、他の加盟国とガス供給の融通をし合うための2国間の「連帯協定」の締結を、加盟国に求めている。しかし、現状では「連帯協定」の締結は、ドイツやバルト3国などと隣接する一部の加盟国間などにとどまっている。そこで、欧州委は「連帯協定」がない加盟国間において、直接的に適用可能な取り決めの提案をする予定だ。
  4. ガスの共同調達:欧州委は、EU全体でのガスの共同調達に向けた提案を予定している。実施時期について、ドイツなど一部の加盟国は早期実施を求めているものの、2023年夏前までに共同調達を開始することを念頭に置いているとした。

(吉沼啓介)

(EU)

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