南ア政府がグリーン水素市場における可能性を説明

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2022年10月25日

在南アフリカ共和国日本大使館と南ア日本商工会議所は930日、共催でグリーンエコノミーに関わる意見交換会を実施した。南ア大統領府から、投資インフラ室グリーンエコノミー専門家のマソパ・モシュエシュエ氏が招かれ、日系進出企業に対して、南アのグリーン水素市場(注)における可能性について説明した。

同国の水素に関する取り組みは、2007年に科学技術省(DSI)が主導した南ア水素(HySA)イニシアチブまでさかのぼる。当初の研究では、内燃機関自動車の代替として、水素自動車の活用に焦点を当てていた。その後、政府は2011年に「国家気候変動対応政策(NCCRP)」、2012年に「国家開発計画(NDP)」を策定し(2021527付地域・分析レポート参照)、炭素排出量削減に積極的に取り組むこととなった。現在は、さまざまな産業で水素エネルギーが活用できないか検討されている。

モシュエシュエ氏によれば、南アのエネルギー産業は炭素排出量全体の約40%を占める。政府は、再生可能エネルギーの活用だけでは、南アの脱炭素化は難しいとして、長期的な視点でグリーン水素の活用を検討するという。同氏は、南アでグリーン水素を製造する優位性として、触媒で必要とされる白金族金属(プラチナ族)の埋蔵量が世界トップクラス(2022228日記事参照)であることのほか、同国エネルギー大手サソールがグリーン水素製造に関する専門知識を有することや、送電を行うための大規模な電力網が存在していることを挙げた。

また同氏は、今後、商業的な利用を推進するにあたり、グリーン水素製造のための電力コストをいかに下げるかが課題だと述べた。それによると、南アは太陽光発電や風力発電に有利なエネルギー資源を有している。現在のグリーン水素の価格はグレー水素の24倍だが、再エネにおいてコスト競争力のある地域では、2030年までにグレー水素とグリーン水素の価格が同等になると予想されるため、同年までに競争力のある価格帯でのグリーン水素製造が可能になるという。

なお、グリーン水素の利用は今後、鉱業部門や物流部門において極めて重要な役割を果たすとされ、関連技術に関する研究の加速や水素燃料電池の製造が期待されている。

(注)南アの水素市場の詳細については、ジェトロ調査レポート「南アフリカ共和国の水素市場」を参照。

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

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