EU理事会、ロシア産石油の価格上限設定を含む制裁パッケージ第8弾を採択

(EU、ロシア)

ブリュッセル発

2022年10月07日

EU理事会(閣僚理事会)は10月6日、ロシア産石油の価格上限の設定を柱とする対ロシア制裁パッケージ第8弾を採択したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。ロシアによるウクライナの東部・南部4州の併合(2022年10月3日記事参照)を受けたものだ。EUは併合とそれに先立つ「不法かつ偽りの住民投票」(2022年10月3日記事参照)を強く非難しており、今回の措置はロシアによる戦争継続を困難にすべく、ロシアの石油収入を減らすことが狙いだとしている。

今回の制裁パッケージでは、EUはロシアからEU域外国に向けて輸出される石油(原油・石油製品)に関して、EU域内の事業者が海上輸送を提供することや、それに関連した技術支援、仲介、資金援助を提供することを原則として禁止する。その上で、EUはロシア産石油に価格上限を設定し、この価格上限以下で売買された石油に関しては、海上輸送や関連サービスの提供を例外的に認める。EUは既に制裁パッケージ第6弾(2022年6月6日記事参照)で、海上輸送によるロシア産原油の輸入を原則として禁止することを決定しており、12月5日から禁止措置を適用する(石油製品は2023年2月5日から適用)。一方で、こうした制裁を実施しない域外国では、ロシア産石油の輸入が今後も続くことから、制裁の実効性が指摘されていた。そこで、EUを含むG7は9月、こうした域外国への石油の供給を妨げることなく、ロシアの石油収入を減らすための方策として、域外国向けのロシア産石油に価格上限を導入することで合意していた。米国でもロシア産石油の価格上限の設定についてガイダンスを発表するなど(2022年9月13日記事参照)、導入に向けた準備が進んでいる。EU理事会は価格上限の導入を含むロシア産原油の海上輸送などの禁止措置の開始時期について、別途の決定を経た後、域内の禁輸措置と合わせるかたちで、原油は12月5日から、石油製品は2023年2月5日からとする方針だ。なお、上限価格の価格設定に関しては今後、G7の枠組みで検討するとしている。

このほか、今回の制裁パッケージには、EU・ロシア間の輸出入の新たな制限も含まれる。EUはまず、ロシアからの輸入禁止の対象品目(鉄鋼製品と半製品、木材パルプ、紙、巻きたばこ、プラスチック、化粧品、自動車、繊維製品、宝石、希少金属のほか、一部の機械製品や化学品など)を拡大する。また、航空分野の製品のほか、軍事や技術強化に利用される可能性のある一部の電子部品や化学品などを対象に、ロシアへの輸出制限も拡大する。建築、エンジニア、IT、法律の各分野でのロシアへのサービスの提供も禁止する。

さらに、EU加盟国の国籍保持者による特定のロシア国営企業の取締役などへの就任を禁止する。EU域内の資産凍結や資金提供の禁止、域内への入域禁止の対象となる個人・団体についても、ウクライナ4州の併合などに加担したとされる30人と7団体を追加し、制裁対象者は合計で1,236人・115団体となった。

(吉沼啓介)

(EU、ロシア)

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