米財務省、ロシア産石油の上限価格設定についてのガイダンス発表

(米国、ロシア)

ニューヨーク発

2022年09月13日

米国財務省外国資産管理局(OFAC)は9月9日、ロシア産石油への上限価格設定に関する予備ガイダンスを公表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。上限価格を超えたロシア産石油の海上輸送サービスについての指針を示している。

米国は、ロシア産のエネルギー禁輸措置など(2022年3月9日記事参照)、各国と協調してウクライナ侵攻に対するロシアへの制裁措置を進めてきた。しかし、制裁による需給逼迫などに伴う原油をはじめとしたエネルギー価格の高騰により、ロシアのエネルギー輸出による収入は一時的に増加したとする国際エネルギー機関(IEA)の報告もある。OFACは今回の上限価格設定について、ロシアの主な資金源を減少させるとともに、世界的な混乱による将来の価格高騰から、米国および世界の労働者や企業を守るための手段の1つだとしている。

ガイドラインによると、ロシア産の原油および石油製品のうち、設定された価格の上限を超えるものについて、その海上輸送の際に保険各社が保険サービスを付帯することなどを禁止する。財務省によれば、世界の海上保険の約9割がEUおよびG7の保険会社から提供されており、保険サービスがなければ、海運各社は事故時の賠償リスクが大きくなることから、ロシア産石油の輸送へのインセンティブを減退させる効果がある。

またOFACは、国際貿易に関与する保険会社や金融機関などに対し、ロシア産石油がG7の設定する上限価格設定以下で売却されていることを証明する契約書などの文書を求めるとしている。さらに、価格情報の提供拒否や出荷書類の改ざんの兆候といった、価格上限違反が疑われる事項がないか、今後、より注意して検討するよう民間企業に勧めている。

上限価格の導入開始日は、原油については12月5日から、石油製品については2023年2月5日からの予定としており、既に発表されているEUのロシア産石油の海上輸入禁止措置の導入時期と同じタイミングでの導入となっている。

一方で、実際の上限価格をどの程度にするかについては、G7で調整が続いていることに加え、ロシア産石油の輸入に中立的とされる中国やインドなどのG7以外の国が上限価格の設定に加わるかどうかなどは不透明で、本スキームが有効に機能するかどうかについては、引き続き注視が必要だ。

(宮野慶太)

(米国、ロシア)

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