バイエルン州とBW州、「水素アライアンス」を発足

(ドイツ)

ミュンヘン発

2022年09月13日

ドイツ南部のバイエルン州とバーデン・ビュルテンベルク(BW)州は8月29日、水素・燃料電池分野における競争力強化のための「水素アライアンス」の発足を発表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。発表に先立ち、マルクス・ゼーダー・バイエルン州首相とビンフリート・クレッチマンBW州首相が、両州の境に位置する街ウルムにある「BW州太陽エネルギー・水素研究センター(ZSW)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の燃料電池研究施設を訪問した。

今回発足した「水素アライアンス」を通じ、両州は、(1)水電解装置用部品の製造などにおける共同プロジェクトの実施、(2)両州の水素クラスター(H2.Bayern外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますH2BW外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の協力強化、(3)水素充填(じゅうてん)施設ネットワーク計画における地域横断での協力、などを進める。クレッチマン州首相は「水素は、両州を含むドイツ国内の産業集積地まで届ける必要がある。それゆえ、両州は水素・燃料電池分野における技術拠点としてのさらなる強化に向けて協力する」とした。ゼーダー州首相は「ドイツのもっとも重要な産業地域が、水素分野で自立できないことがあってはならない」とした。なお、南ドイツ2州の域内総生産はドイツ全体の33.5%を占め(2021年名目値)、自動車や機械を中心に製造業が集積している。

両州首相は水素調達について、ドイツ国内・欧州の水素ネットワークの迅速な構築、および、南ドイツ2州などの産業集積地が遅くとも2030年までにそのネットワークに迅速かつ優先的に接続されることを求めた。また、北方からだけではなく、南方からの供給も検討するなどしてリスク分散すべきだとした。具体的には、中東、アジア、オーストラリアで製造した水素をスエズ運河経由でイタリアの港に揚げ、南ドイツに供給する。一方で、南ドイツにおける水電解装置を活用したグリーン水素(注)の製造も推進する。

両州は既に、水素活用に向けた取り組みを進めている。バイエルン州は2020年5月、「水素戦略」を発表(2020年6月5日記事参照)、2022年4月には戦略を具体化した「水素ロードマップ」を発表した(2022年5月9日記事参照)。同州は、今後数年で約5億ユーロの予算を確保し、(1)グリーン水素製造のための大規模水電解装置、(2)モビリティー向け燃料電池セルシステム、(3)グリーン水素供給のためのドナウ川沿いの汎欧州ネットワークの構築などを進める。一方、BW州も、2020年12月に「水素ロードマップ」を発表(2021年1月6日記事参照)、同じく最大5億ユーロで研究開発助成などを進める。

(注)再生可能エネルギー由来の電力を利用して、水を電気分解して生成される水素。製造過程で二酸化炭素を排出しない。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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